時間という旅路


真正面にオリオン。左手に持つ琴座の二つ星がハッキリと見える。右手に鋭い三日月が、わざわざしつらえた様にしらっと鎮座しており、まるでオリオンがカマを振り上げている様だ。スバルの星々が数えられるほど綺麗に見えるのは、空気が澄んでいる証拠である。ここしばらく雲に覆われていた夜空が、明けてみるとすっかり冬の星座に支配されていた。
しばらくぶりに良い出来栄えのブレスレットが完成したので、ベランダに出て祝杯をあげようと思ったら、眼前の星たちにすっかり魅了され、打ちのめされた。ブレスレットを作り上げた感動を蹴散らす憎い奴ら。
夏は稲妻と雨と共に、連れ立って行ってしまった。あまりにも早い秋の訪れを、熱帯夜に鳴いていたセミたちも恨めしく思っているだろう。
流れ星がずいぶん長いこと光って落ちた。
しばらくぶりの贅沢に、俺は今、浸っている。
誰も俺を邪魔できない。
フィディックを飲もう。
奴らの影響力には勝てない。