俺なんか取るに足らないつまらない野郎ですが、どうか神様、見捨てないでください。
ベランダから望む夜景には、真っ黒な家々の屋根、四角いマンションの影、そこに星をちりばめた様に頼りない灯りが点在し、その数は星の数よりも多い。
夜間飛行のジェット機の音が遠く響くので空を探すけど、どこに機影があるのかわからない。
目視確認できるだけの狭いエリアにも、きっと数えきれない人々の暮らしがある。
それらの人々には何にも代えがたい人生がそれぞれにあり、そんな中で皆が生老病死に悩みながら、小さな出来事に一喜一憂している。
俺だって。
特別な扱いは誰のもとにも訪れない。だから、世の中のあまたある不幸の影に怯えながら生きるのは、生き物として存在する以上、当然といえば当然だ。
あそこが痛いとか、明日の支払いがどうとかは普遍のものなのだ。
でも怖い。
怖い怖いと思いながら生きている。
そんなことが、幸せな風呂上がりにビールを飲みながら夜景を眺めるひと時、頭の中を駆け巡る。