白鷺は昼間、田んぼに舞い降りて何かをしている。それは多分、えさを探しているのだろうけれど、ぱっと見は何をしているのか分からない。畦にじっと立ち尽くし、一歩も動かずにいる。
時おり、少しだけ動いて、田んぼの中に鋭いくちばしを突っ込んではいるのだが、それも一時間に一、二回あればいい方だ。
奴ら、佇んでいるとき、何を思っているのだろう。
悟られぬ様、まなこを開きながら寝ているのかな。
夜中にぎゃあぎゃあ鳴く声がする。
俺は、それこそが鵺だろうと思っている。
すると妻が「白鷺が鳴きよる」と言う。
俺の「鵺幻想」はそこでかき消される。
あれは白鷺か。
奴ら、昼間は鳴かないのな。そのくせ夜中に、矢鱈きたない声で鳴きやがる。
誰かを呼ぶ様な、未練がましい媚びた声だ。
新緑の頃の、しょうしょうと霧雨の降る田んぼに佇む白鷺は、覆い尽くす緑に一点の純白を彩る。
そのコントラストは、ライブでしか得られない、言い得ぬ感動に満ちている。
俺は白鷺が好きだ。
みんな見てみぬ振りをするが、さして重要な存在でもないだろうが、実は白鷺が好きだろう?
真っ白だから。