寝苦しい七月、北側と南側の窓を開けっ放しにするが、例え涼しい夜風が俺の体をスルーして安眠を得られたとしても、如何ともし難い湿気にやられて、おかしな夢を見る事が多い。
強い夢を見る。
夢で出会った誰かの事をいつまでも消せないで、朝が来て、代わり映えしない生活をだらだらと過ごしている時にすら、あれは誰だったのかを考え続け、ダチュラを食った時みたいな白日夢から抜け出せないでいるのだ。
それは、例えば雌猫の腰の辺りをなでると、腰を高く持ち上げ尻尾を上げて、雄を迎え入れる態勢をとってしまうのに似た太古の記憶で、湿気を含んだ夜風に当たると恋をせずにはいられなくなる人間の野性なのかも知れない。
俺は発情期だ。
いつでも発情期だろって?
そうじゃないんだな。
大抵の俺の艶話はご愛嬌だが、夏は違う。
結構本気だぜ?