例年、ギター教室で
二週にわたって
土曜の7時から行っていたリハを、
今年から日曜に学習センターで
1回きりになってしまった。

それでも、20名が参加して
それぞれプログラム曲を発表した。

本番でもほとんど上がらない
得な気質をしているが
この日は、普段ありえないような
ミスを多発したので
やはり、どこか緊張していて
神経・筋肉の回路が正常では
なかったようである。

難曲なので、ちょいと油断すると
正確な音楽から脱線してしまうので
10分間の集中と緊張が必要とされる。

アドレナリン全開で
音楽と楽器と向き合わねばならないので
たった10分の演奏でもシャツが
汗まみれになってしまう。


午前中レッスンに来ていたK君と
昼食に馴染みの鮨店に
ギター持参で行ったら
ご主人に
「ちらし、サーヴィスしますので
 一曲やって下さい」
と請われ、『影を慕いて』を
ワン・コーラスだけご愛想に弾いたら
ほんとうに代金を受け取ろうとしないので
仕方なく1.000円だけ義捐金箱に入れてもらった。

帰りしな、愛想のよいオカミには
今日はガンバッテきてくださいと、
いつもの屋号の入ったタオルをもらい、
27度にもなる暑い日だったので
さっそく、リハ前の練習後に
汗拭きとして使えて重宝した。

K君も4回目のコンサートで
少し雰囲気にも慣れてきたようで
『アルハンブラ』と『さくら』を
卒なく演奏していた。

いよいよ今週は、大ホールの舞台に
独りで立たなくてはならない。

ソリストというのは
孤独なもので、ステージでは
誰も助けてくれず、それまでの練習量と
どれだけ真剣に音楽と向き合ったかが試され、
しかも、その結果が全部
自分に返ってくるのだから
マジにやっていたら恐ろしい世界である。

その辛い作業、孤独な闘いに敗れ
打ちひしがれて、途中でやめていった仲間が
何人もいる。

だから、ソリスト仲間どうしは
ほんとうに仲が良く
お互い尊敬し合っている。

この日も、
初めて人前で演奏した女子高校生が、
2曲無事に弾き終えると、
極度の緊張から開放されて安堵したのか
急に泣き出してしまって、
先生に慰められていた。

カラオケ店で
人前で平気で歌える人間でも
楽器を与えられて
並み居る上級者の前で
「弾いてごらん」
と言われたら、普通の神経なら
誰もが手がブルッてしまうのだ。

恩師の河合隼雄先生でさえ
講演なら何千人の前でも平気だが
フルートのコンサートでは
舞台袖でブルブル震えてしまう
と言っておられた。