高校生偏⑨

 

全国高校サッカー選手権大会の予選が終わり、

悔しさだけが胸に残る日々が続いていました。

 

最終学年となった私たちにとって、

次の新人戦は“集大成”の始まり。

 

言い訳も逃げ道もない、

同じ学年同士の真剣勝負が待っていました。

 

正月が明け、チームで「切り替えていこう」と

声を掛け合いながら迎えた新人戦。

 

私たちの心には「どこが相手でも勝つ」

という強い意志しかありませんでした。

 

予選では全試合で相手を圧倒し、大勝を重ねました。

 

県大会でも準決勝まで順調に勝ち進み、

チームには「このまま優勝する」

という空気が漂っていました。

 

そして誰もがその結果を疑っていませんでした。

 

しかし、順調なときほど、

思いもよらぬ出来事が突然訪れることに…

 

準々決勝前に食べたお弁当が原因で、

試合後から選手たちが次々と体調不良を訴え始めました。

 

病院に運ばれる仲間が増えていく中、

私は宿舎で風呂に入り、夕食も済ませ、

何事もなく過ごしていた。

 

「明日の試合は出られます」と監督に伝えたその夜、

私の体調も急変しました。

 

嘔吐、下痢、そして救急搬送されました。

気づけば、レギュラーメンバー全員が

食中毒で入院する事態となっていました。

 

残されたメンバーで試合をすることになり、

公式戦初出場の下級生も多く含まれていました。

誰もがこんなことを予想していませんでしたし、

不運としか言いようがありません。

 

出場するプレッシャーは計り知れなかったと思います。

 

私たちは病室のベッドの上から、点滴を打ちながら、

ただただ勝利することを祈るしかありませんでした。

 

試合後、顧問の先生が病室に報告に来てくれました。

「準決勝は勝てたけど、決勝は接戦だったが1-2で負けた」と。

 

みんなが自分の力を出して精一杯戦っていて、

良い試合だったと伝えてくれました。

 

優勝を目指していた私たちにとって、悔しい結果でした。

しかし、不測の事態にもかかわらず、

決勝まで戦い抜いてくれた仲間たちに、感謝しかなかったです。

 

 

 

3日間の入院生活を送り、退院をしてまた寮生活に戻りました。

久しぶりに学校に登校をしたときに

メンバーたちと新人戦の話しで盛り上がりました。

私は「次の日に試合に出る」と言っていたので、

みんなから笑いながら怒られました。

 

今回の経験は私たちの絆を深めてくれました。

また、全員で戦ったということでチーム力の

向上にも繋がったと思います。

 

練習に復帰してからは体力が戻っていないので、

コンディションを戻すことからになりました。

それでも最終学年ということで、

モチベーションは高く保てていました。

 

そして、4か月後に控えるインターハイ予選に向けて、

私たちは再スタートを切りました。

 

高校生偏⑩につづく

 

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