それを本当に達成したいのか? そのために、他のすべてを失ってもよいという覚悟があるのか?
『鬼眼城』は実は、それを問いかける話です。
隼人という主人公の、この物語における最終目的は、
「天守で出会って心を通わせた幼い姫を助けること」。
ところが物語が進むうちに、隼人はその目的のために、大切なものを犠牲にする岐路に、何度も何度も立たされます。
多くの敵兵の生命を奪い、
敵に回せば恐ろしい相手を本気で怒らせ、
仲むつまじい夫婦の仲を永遠に裂き、
恩人の厚意を踏みにじり、
死んでいった大切な人にかつて約束した「誓い」を捨て、
尊敬してやまない名君をも敵に回し、
そして最終的には、城が焼け、その国が滅び、多くの家臣やその家族が路頭に迷うという事態にも直面します。
たった一人の少女を助けるために。
大事のためには小事を捨てよ。
そういう「大人の論理」は痛いほど分かっていながらも、だからといって、小事(その少女)を見捨てるわけにはいかない。
いかに大事を損ねることになろうとも、心に重い荷を背負うことになろうとも、その小事を守ることを貫く。
隼人はそういうキャラクターです。
私が今まで書いてきた物語には、こういう人物が多いです。
たとえ他人から見たら「ちっぽけな、こだわり」にしか見えないことでも、
その本人にとっては、重大なこと。
それを守りぬくためには、どんな犠牲をも厭わない。
世間や他者との間に軋轢が生じようとも、甘んじて、それを受けとめる。
ゲーム『金田一少年の事件簿~悲報島新なる惨劇』もそうですし、
今、某出版社さんで準備中の新作小説もそうです。
『鬼眼城』もまさにそれで、
このたび配信した「其の四」から、ますます過酷になっていきます。
次々と隼人の前に立ちはだかる試練。
それが、どんどん困難になり、
そして「其の四」では、取り返しのつかない事態を招いてしまうのです。
胸に突き刺さるような悲劇で、、、私が最も好きな章です。
檜木田講談『鬼眼城』、好評連載中です。