シェイクスピアに見る愛 3.

「オセロー」

(3/15付日経夕刊より)


愚かにではあるがあまりにも深く愛した男であった
容易に嫉妬に駆られはせぬのに たぶらかされて
極度に乱心した男であった
(オセローが妻デズデモーナを殺した後の台詞)

そこには妻の潔白を知っての安らぎに似た感情が
陽炎のように揺らいでいる。

その嫉妬の黒い炎は愛の火を消すのではなく、からみ合って
ますます高い火柱となるところにオセローの悲劇がある。

愛と嫉妬が戦えば、ほとんどの場合、嫉妬が勝つ。
だが、それでもなお燃え続けるとき、愛の炎は昇華されて
永遠のものとなる。