佐々木俊尚著 06年12月 文春新書
-誰がウェブ2.0を制するか

本書の概要は帯に譲るが、率直な感想を述べる。

Winnyの開発者(東大助手、後に逮捕)へ著者は大変シンパセティックである。
全11章のうち、途中P2P,ネットの歴史などを詳述しながら、5章も割いている。
はっきりとは記されてはいないが、国家による統制弾圧と考えているようだ。
ただ長過ぎる。インタヴューの引用も多いが、この半分位の量で十分書ける内容だ。

日本政府による電脳標準化戦争の敗退(7章)、電子立国日本が中心になるべきアジアでの
オープンソース(とくに漢字文化)につき、中国が覇権を目指す動き(8章)など興味深く
参考になった。

ウェブ2.0は巨大平板なサラダボールと著者は言う。
政府個人情報サーヴィス商品はこのサラダボールに投げ込まれ、この世界の基盤となる。
まえがきにあるように、前著「グーグル 既存のビジネスを求めて」でグーグルにあらたな
社会モデルを期待し楽観したが、本書はそれに対するマイナス面への危惧の書と言えるだろう。
即ち、国家による「囲い込み」である。

同じ著者によるこちら↓も参考になる。

ウェブ2.0は夢か現実か?-テレビ・新聞を呑み込むネットの破壊力-
06年8月 宝島社新書

帯(↓)
インターネットは「ウェブ2.0」というパラダイムの出現で大きな岐路に立たされた。
ネット社会の理想は国家権力と激突し、インターネットの覇権を巡って国家間の総力戦が開始された! 
渾身のネット社会未来論。