Snowy prince・32「真実」
父には兄弟がいない。
だから、継承権第二位は父の従兄弟の中で、
一番年上のあいつだ。
父は王として絶対権力を維持していて、
いかに身内であっても軽々しい態度で接する事など
絶対に出来ない程だった。
けれど、あいつだけは違う。
なにかと挑戦的で厭味ったらしく、
いつも人を見下すような冷たい目をして
時折父の所へやってきては、馴れ馴れしく
大きな声で話をした。
あいつが来ると父は、僕を別室に連れて行くよう
使用人に指示を出していた程だ。
「あの人、、、確か独身だったよね?」
「えぇ。あの方はとても貪欲な方ですから、妻子を養うなどごめんだ、といつも言っておりました。」
「その割には、いつも女の人と一緒にいないか?」
「あれは単なる飾りだ。、、、恋人でもなんでもない。安く買ってきて遊んでるだけだ。」
「、、、最悪。」
「、、、その従兄弟が王の全てを奪い取り、自らが王に君臨したいがために、あなたの弱みを握り、女王を始め、王、そしてチャンミンの暗殺を企てたんですね?」
「えぇ、、、。私のしたことは正しかったかどうか、今でも分かりません。もっといい方法があったのではないかと、考えない日はありません。どんな理由であれ、幼い王子をお母様から引き離すなんて、、、あまりにもひどい事だ、、」
「でも、それしかなかった。ここに居たら、母は明日をも知れない状況だったのだし、、、。それに、公爵は毎年僕の誕生日に、母のところへ僕の写真を送ってくれていたのでしょう?それが母にとってどんなに嬉しかったか、僕には分かる気がするよ。」
ユノは鞄の中から母の作ったアルバムを取り出し、
僕へ渡してくれた。
「中を見れば分かるけど、その都度チャンミンへのメッセージを添えてきちんと保管されている。愛情に溢れた、世界一美しいアルバムだと思う。」
「そう、、、。ありがとぅ、ユノ。」
「それから、これ。彼女の書いた日記もチャンミンに返しておくよ。」
「あ、、、今まで大切に持っていてくれて、、、本当に、、、ありがとう。」
「女王は自分の死後、見届ける事が出来なくなる君の事が心配だったのと、自分がこの世から居なくなれば、公爵の苦しみをひとつだけ軽くすることが出来ると考え、全ての想いを俺に託し、ここへ導いてくれたんだ。」
「ユノ様。、、、女王があなたを選んだ理由が分かります。聡明で素直で冷静で、、、あなたのお陰で私は自分の罪を、自分の言葉で告白する事が出来た。やっと息が出来る様になった気がします。、、感謝致します。」
そう言って公爵は、深々とユノにお辞儀をした。
「ユノさん、、、俺は何となくあんたの事がいけ好かない。あんたのせいで、知らなくて良い事まで知ったような、、、そんな気がしてるのも事実だ。けど、、、今の親父の顔は以前とは全く違って、とても穏やかに見えるから、、、きっと、これで良かったんだと思ってる。」
「そう、、、。とにかく、君は公爵とよく話し合う事が必要だ。君なら全てを理解し、苦しみを分かち合うことが出来るだろう。本当に、、、公爵は立派な親父さんだよ。」
「ありがとう。、、、それと、、チャンミン、」
「ん、なに?」
「親父はおふくろの事を隠してたんだし、お前の、、、お前の命を狙って行動してたのは確かなんだから、、、その罪は償わないと、、、」
「あぁ、、、だけど、、、」
本来なら、王国裁判にかけて然るべき判決を下すべきところだ。
けれど、公爵がしてきた事の裏には重要な意味があったのだから
安易に裁くなど出来やしない。
ミノの言葉に返事が出来ずにいると、
公爵が察して言葉を放った。
「王子。私はどんな判決を下されても構いません。とうに覚悟は出来ているのですから。、、、ただ、」
「、、、ただ?」
「あの方を私より先に裁いて頂きたい!、、、そうでなければ、私は安心して牢へ入る事など出来ません!あの方は何をしでかすか分からない。こうなった以上、一刻も早く拘束してください!」
「、、、どうするかは僕が決める。今夜一晩、僕に考える時間を下さい。」
「チャンミン、、、」
「今夜はもぅこんな時間だし、せっかく来てくれたユノになんのお持て成しも出来ていないままだ。ひとまず、公爵。あなたの指示で晩餐の準備を早急にさせて下さい。」
「あの、、、私がしても、、、宜しいのですか?」
「もちろん。あなたを信用していますから。すぐに頼みます。」
「かしこまりました。」
公爵は驚いていたが、やがてそれは安堵に変わり、
僕にお辞儀をしてから部屋を後にした。
「それから、ミノ。」
「、、、うん。」
「今夜は公爵と二人で城に泊まってくれる?ユノが来てるし、万が一の事を考えて護衛して欲しい。」
「あぁ。お前が言わなくてもそうしようと思ってた。お前とユノさん、今夜同じ部屋で過ごせるように部屋の準備をするよ。、、、じゃぁ、ユノさん。僕はいったん失礼しますね。」
ミノは複雑な思いはあるだろうけど、
ユノに対しての態度が少し柔軟に変化しているようだ。
少しの微笑みを添えて、ユノに会釈をして出て行った。
「あのさ、チャンミン。良いよ、そんなわざわざ気を遣わなくても。俺のやるべきことはやったし、もぅ向うの世界へ帰、、、」
「なーに言ってるの!?ダメだよ、絶対に。今夜は泊まって貰うから。」
「そもそも、約束を破って急に来たのは俺だし、もう一度山小屋に戻ってるよ。」
「だめだってば!もぅあの宝石は僕が持ってるのに、どうやってあそこまで辿り着くの?外はもぅ暗いんだよ?今夜は泊まってもらう。」
僕はユノへ駆け寄って、腕をグイと引っ張った。
「いゃ、でも悪いよ。こんな時に人間の俺が、、、」
「ユノ。、、、こんな時だからこそ、だよ。分かるでしょう?、、、人間だとかそんなの全く関係ないし、僕は、、、」
僕がそう言うと、ユノは眉毛をひょいと上に上げて、
クスクスと笑いながら、尖らせた唇の先で僕の鼻先を突くような仕草をした。
「ったく。甘えん坊。」
「違う。」
「ハイハイ、わかった(笑)」
「違うったら!」
「わ~かった、ってばw。あ~、今夜はどんなご馳走を食べさせてくれるのかな~♪たのしみ、たのしみ。」
つづく
※Snowyに使用しているGifの一部は、ちゃるさんにお借りしています。ちゃるさん、ありがとうございます♪
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
㌧ばんは(/・ω・)/
Snowy。
あと5話くらいで終わりそうかな…






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