ヒョンとぼく・19
彼女がどういう目論見を持っていたのかは分かった。
ユノとマネヒョンが、どんな気持ちで僕に黙っていたのかも。
『要するにあなたは、ユンホとマネージャーを脅していたんですね。そして今、僕の事までも。、、、そんな最低な事をする人のところに、僕がついて行くと思いますか?絶対にあり得ない。お断りします。』
僕は立ちあがり、正面に座る彼女に向かって答えた。
後輩の話を持ち出せば、僕が首を縦に振ると信じて疑わなかったのか、
彼女は驚いて大きな声を上げた。
『あなた、なにを言ってるか分かってるの???私の傍に居れば、全てがうまくいくのよ?いずれウチの会社を継ぐ事になれば、地位も財産も手に入るし、必ず幸せになれる!』
両手を広げて、訴える彼女、、、
必死になればなるほど、僕の気持ちは冷めていく。
『いいえ。むしろその逆だ。なにも知らずにあなたの言うとおりにしていたら、僕はいつかきっと壊れてしまう。そしてなにもかも、最悪の事態になるでしょうね。』
『そんな事はさせない。私はただ単にあなたが欲しいだけじゃない!あなたの歌声を、もっともっと多くの人に聴いてほしいと思ってる。』
『僕は僕の歌だけじゃなく、東方神起としての歌を、もっとみんなに伝えていきたいと思ってる。なぜなら僕は、、、』
次の言葉を直ぐに言いたいけれど、
何かが溢れて来そうで、喉の奥がぐぅ、と鳴った。
『、、、なぜなら?なんだというの、チャンミン。』
『なぜなら僕は、、、東方神起だからだ! 』
ありったけの想いを込めた言葉を、
ユノは腕を組み、黙って聞いていた。
僕はユノの方に向き直って告げた。
『ユノヒョン。僕はどこにも行かない。僕は永遠に、東方神起のメンバーだ。』
『、、、あぁ、そうだ。』
僕の言葉に対して、たった一言だけ答えたユノヒョン。
僕の選択を受け入れてくれた、大切な返事。
けれど、彼女は違う。
まだ現実を見ようとせず、取り乱したまま責め立てた。
『ちょっと!正気なのチャンミン!、、、ユンホのせいね。ユンホさえ余計な事を言わなければ、あなたは、』
『いい加減にしろよ!、、、まだ分からないんですか!?、、、僕はユノと一緒に歌わなければ意味がないんだ。』
『そんな事ない!』
『黙って聞いて!、、、ユノの声があるからこそ、僕の声は生かされる。僕らは二人でひとつ。どちらかが居なくなれば成立しない。僕はユノから離れない。永遠に。なにが起こっても。』
これは、僕にとっての「告白」でもあった。
今まで思ってても言葉に出来なかった。
何故なら、僕だけがそう思っているとしたら、、、
間違っているとしたら、、、
僕は行き場を失ってしまう。
それが怖かったからだ。
けれど、今はそんな不安はない。
僕はありのまま、ユノと共に生きていける。
『、、、話は終わったな。もう諦めろ。』
『終わってない!諦めない!』
『あんたがチャンミンの良さを理解して好意を寄せてくれたことは嬉しかったよ。、、、最悪な方法だけど、必死だったから故にここまでしたんだろうし、、、。』
『そこまで分かってるならチャンミンを説得してよ!何が不満なの?なんでもするから、、、』
『いい加減にしろ!、、、こんなやり方じゃ駄目だ。これじゃオモチャを欲しがる駄々っ子と同じだ。もっと正しい方法を学べよ。このままじゃ、あんたの周りには誰も居なくなるぞ。』
『ヒョン、もういいから。』
『、、、、、、。』
『二度と俺達に近付くな。、、、チャンミナ、帰るぞ。』
ユノは立ちあがり、僕の手を取った。
『あ、、、待って、ユンホ。ちょっとだけ、、、』
肩を落として言葉を失い、俯いたままの彼女の目から、
ポタポタと涙が零れるのが見えた。
ひどい話だったけど、他に方法を知らない彼女を気の毒に思う。
僕は最後に、彼女に言葉をかけた。
『あの、、、もっと違う形で会えてたら、僕たち、良い友達になれたような気がします。』
『、、、ふ(笑)、恋人って言うならまだしも、友達って、、、』
『、、、すみません。僕がこの世で最も愛してるのは、、、』
『わかってる。、、、もういいわ。二人とも早く出て行って。』
『チャンミナ。』
『あ、はい。、、、、じゃぁ、さよなら、、、。』
それから僕たちは、彼女の部屋を後にした。
繋いだ手は、離さないまま。
つづく
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