ずいぶん久しぶりの更新になってしまった。
さて、ここで続けて上質の時代小説を続けて読了したので、連続して記事にしたい。
まずは、読んだ順番は前後するが、ここでもお馴染みの夢酔藤山先生の「梅の花の咲く処」について書いてみたい。
この小説は約20年前に夢酔先生初めての新聞連載小説として、先生の地元の西多摩新聞に掲載された。
その時には単行本化されず、ご縁があって、今年(2024年)単行本化されることになり、書き下ろしの前日譚「梅かほる闇路」が加えられた。
時は戦国初期、武蔵国杣保、今の東京都青梅市から西多摩、高麗郡までを勢力下に置いていた地方豪族「三田氏」その治世は小田原北条氏、関東管領上杉氏に挟まれ翻弄される。
当主三田弾正少弼綱秀と、その一族の攻防の物語だ。
何度もあちこちで書いているが、わたしの読んだ最初の時代小説である。まったく時代小説、戦国時代を知らない、大河ドラマも見ない私には、当時難しくなかなか読み進められなかった。
20年経ってみると、今はインターネットも発達し、毎日夢酔先生の作品が読める時代になり、この小説も時間はかかったが、すんなり心に入ってきた。
話は戻る。この小説は戦国時代の地方豪族の悲哀を描くと共に、家族、親子、兄弟を描いている。
一貫しているその姿勢は現在にも通じるものがあるだろう。
三田弾正が、家を継いだ時の葛藤、兄の死、弾正の息子たち、娘、家臣とその妻たち。それぞれに、真っ直ぐと生き抜こうとして、それが叶った者、叶わなかった者、生き残った者の運命。それぞれの人物が愛おしく、本編の「梅の花の咲く処」のすべてがなくなってしまったのに、読後感がなぜかすっきりと、物語にいた登場人物たちの残り香を感じ、清々しいくらいであった。
もちろん、戦い、駆け引き、裏切り、死はある。読んでいて辛くもあった。
物語は三田弾正の妻、妙の死と葬儀から始まるが、そのふたりの繋がりがいかに強かったかが、前日譚「梅かほる闇路」で語られており、読み終わって、最初に戻ると、妻を亡くした三田弾正の力が抜けてしまった様子が、ほんとに片割れを亡くしてしまったんだと、胸につまされた。
また、弾正の次男喜藏が弾正の若い頃に似すぎていて、悩みの種であり、結果喜藏は三田氏が滅んだあと、野垂れ死にのように亡くなっていく無情。弾正のように導いてくれる人物が存在しなかった悲しさを、父子の難しさと共に感じた。
弾正の娘、笛姫の愛と恨みと、死が心に刺さる。戦国の世とは言え、女たちの運命も過酷だ。
笛姫については、作家吉田知絵美先生による歌が作られている。美しい。
読みどころ満載でこれ以上書くと、どうなってしまうか自分でも分からないので、この本は受注出版であるが、多めに西多摩新聞社が刷ってくれているので、まだ入手可能である。とにかく手にして欲しい。
西多摩新聞社のサイトは夢酔先生の本の宣伝でいっぱいだ♥
https://www.nishitama-shinbun.co.jp/
夢酔先生は、現在「西多摩新聞」「房州日日新聞」「南信州新聞」で連載を持っているので、その書籍化も楽しみにしているところであるのだ。
夢酔先生、いい本をありがとう😊