オルタナティブスクールという言葉や存在を知ったのはつい最近のことだ。本来は、フリースクール、ホームスクール、無認可校などを総称した言葉らしい。alternative もうひとつの選択肢。オルタナティブ教育を取り入れた公立でも私立でもないもうひとつの学校という位置付けのようだ。
聞き慣れたところでは、シュタイナーやモンテッソーリがある。最近増えているのは、欧米の哲学的思想に基盤を置かず、独自の考え方や信念に基づいた学校だ。子どもの個性や自主性を尊重し、好奇心や興味をもとに自発的に学ぶ体験型学習を軸にしている。
福岡にもいくつかある。中でも糸島のある地区に何校か存在する。自分の子どものために親御さんたちが協力して設立した学校もある。そのひとつで今年開校したスクールを見学させてもらった。設立者からじっくりと話を聞くことができた。
特にカリキュラムは設けていない。唯一月曜日と金曜日の午前中にどんぐり算数という授業を取り入れているだけ。どんぐり算数とは、公式や計算式に頼らず、文章問題を読んでそれを絵にすることによって回答を導き出す思考力を伸ばすための手法。試させてもらったが、いやいや既成概念や知識に邪魔されて中々絵が描けない。大体大人の方が悩んで行き詰って降参するらしい。
この学校に先生はいない。大人が子どもに教えるということはあえてしない。スタッフという呼称の大人は見守って求められた時に手助けするだけ。毎朝ミーティングをして、午前中にやることを子どもたち自身が話し合いで決める。お昼はみんなで作って食べる。午後はそれぞれやりたいことをやる。唯一のテーマは作ること。モノ、コト、プロセス、なんでもいい。この学校の運営の中心となっている大人たちは、デザイナーやアーティストで何もないところから何かを作り出すことを生業としていて、何かを作るという作業を通して、創造することのみならず多角的に様々なことを学ぶことになることを経験を通して理解している。そして、画一的な教育を唯一の選択肢とするのではなく、子どもたちの個性を尊重し多様性を受け入れるもうひとつの教育の選択肢があった方が子どもたちのためにも国の将来のためにもいいのではないかという思いがある。決して現行の教育制度を否定しているわけではないが、他に選択肢があって多様な学びや体験をした個々人で形成される社会を作る方が将来に期待できるのではないか、そこに賭けてみてもいいのではないかということだ。
糸島にあるオルターナティブスクールはある保育園の存在が大きく影響している。その保育園は、子どもの潜在能力を信じて自然の中で自由にさせる。大人は、ほかの子どもを叩いたり蹴ったり噛んだりした時に介入するだけ。いじめはないのか、介入しないのかと聞いてみた。いっぱいあるけど、子どもは特に深く考えてる訳ではなく、いじめたりいじめられたりしつくして、自らそれがくだらないことを知ってやらなくなるのだそう。そして、それも必要な学び。
まだ開校したてで、在籍者は設立者の子どもが2人だけ。私がお邪魔した日はもう1人体験に来た子どもとお母さんがいた。3人とも人懐こくて物おじしないですぐお友だちになれた。どんぐり算数の後は、ジンジャーブレッドでお菓子のお家作りをした。スィーツ作りを生業としている女性が材料と共に訪れて一緒に作ったのだ。子ども同士、大人と子ども、大人同士もすごく自然で心地よい関係性で、本当に楽しい経験ができた。ありがとう。
写真は子どもたちがアーティストと一緒に作ったアートと、窓からの景色。山の荒れ果てた森林と旅館だった建物を少しずつ整えていってる手作りの学校。ここからの発展が楽しみ。

