今春に入り、ますますボイトレ(歌唱指導や発声指導)の仕事が増えてきた。


たくさんの人を教える機会が増えるのは、それだけ類型的なデータ(体験)も得られる訳で、僕自身にとってもボイストレーナーとしての経験と知識を増やし、実力を高めることができる。


その一方で、いろんな人を指導することになる訳だから、その目的や需要が異なるということを常に気をつけているはずなのに、時々失敗することもある。


先日も初めて習いに来た方に「今あなたはこういう状態だから、こうやって歌って見た方が良いですよ。(やってみる)ほら、良くなったでしょ?」と、声を修正したのだが、当の本人は首を傾げている。


その時、僕は自分の間違いに気づいた。


まず…
①自分の状態に気づいていない
…最初にその人の上手くいっていない部分を指摘したが、そもそもそのことに実感がないから「え?私が治してほしいのはそこじゃない」となっていたのである。病院に「足が痛いのですが…」と、やって来たのに「その原因は足ではなくお腹です」と医者に言われてもピンと来るはずがない。

②そもそも治す気がない
…自分の感じている症状と違う場所を治療されても、そもそも何をされているのか「?」になっている。

③良くなった実感がない
…僕としては根治を目指しているから原因究明と、その対処療法を施したが、患者さん(生徒さん)自身はお腹ではなく「足の痛みを何とかしたい」のだから、今すぐ足を治療して欲しいと望んでいる。


こういう失敗をした瞬間の空気…嫌〜な感じなのですぐに気づきました。何度も経験している。


「言葉が通じていない」「私のことわかってるフリして、何も理解しようとしていない」「今日来たの無駄だったな、もう帰りたい」という心の声と疑いの視線が僕に向けられる。



そこで、僕は一気に方向転換をする。


その人が今日なぜここに来たのか?
僕にどんな期待をしてきたのか?
何を言って欲しいのか?

冷静にもう一度考え方を組み立てていく。


今この人は音色を変えたいと思っているわけではない。声の芯を求めている、と気づく。


説明を省き「足をこうして歌ってみて」と、やり方だけ簡単に教えて、あとは誰にでもわかるほどの声の変化を体感してもらう。


先程とまるで違う声になる。
「そうそう、こういう声を出したかったの!」という表情でこちらを見る。その表情は先程とうってかわって輝きに満ちている。


それからなるべくシンプルに今起きたことを説明する。「うん、うん」と話を聞きながら、自分の身体と声を感じるようになる。



あ〜良かった…
一時はどうなるか、と思ったけど、良いレッスンになった。
「これからもよろしくお願いします」と言ってくれ、次回のレッスン日時も決まった。



これからも驕らず、きちんと生徒さんたちと向き合って、常に前を向けるレッスンを目指して頑張ります。