北区立中央図書館(赤レンガ図書館) | 図書館利用促進プロジェクト

図書館利用促進プロジェクト

永遠に残していかなければならない人類の知的所産「図書」。
さまざまな図書が集積する「図書館」のあり方が
近年、著しく変貌を遂げています。
図書館の魅力を再発見!
それが「図書館利用促進プロジェクト」の狙いです。

外観2


クローバー概要


昭和63年(1988年)に第二次北区基本計画において計画化、平成12年(2000年)に計画事業化、十条台の中央公園内の赤レンガ倉庫(1919年築。旧陸上自衛隊十条駐屯地275号棟)を改装・増築して平成20年(2008年)6月28日にリニューアルオープンした区立図書館です。段差のないフロア、車イスでも移動しやすい書架や世界初となるミューチップ型ICタグを採用した蔵書管理、太陽光発電パネルや雨水を利用した省エネルギー化などにより、人と環境にやさしい施設を実現しています。


コンセプトは“区民とともに歩む図書館”


◉「利用者が主役」の図書館
利用者の目的に即応できるよう蔵書は明快な配置になっています。一般向け資料をワンフロアに集め、広くゆとりのある空間で活用できるのが特徴。イスも厳選したものを採用、採光にも優れ長時間の滞在にも配慮しています。


◉「永く愛される」図書館
赤レンガ倉庫は北区の近代産業の歴史や当時の建築技術を知る上で貴重な建造物でした。株式会社佐藤総合計画の設計で、ガラスを取り入れた近代建築と融合。明るく親しみやすく、時間とともに風景になじむ建物として区民に親しまれています。


◉「区民が活動する」図書館
区民の図書館活動への参加を促す協働型の図書館をめざしています。区民の会のPRやボランティア人材育成に関する提案をサポートする「企画・広報部」、障害者や高齢者の図書館利用を支援する「ユニバーサル部」、乳幼児期から本に親しみ、楽しめるよう読書活動を推進する「子ども部」、北区の歴史資料のPRをはじめ、過去のあらゆる情報の調査・収集・保存・発信を行う「地域資料部」などで、図書館活動の新しいスキームに取り組んでいます。


◆蔵書統計 最大所蔵可能数(基本計画)

図書
一般書 275,000冊
参考図書 50,000冊
地域資料 50,000冊
YA資料 25,000冊
国際図書 25,000冊
児童書 75,000冊
合計 500,000冊

逐次刊行物
新聞 50タイトル
雑誌 300タイトル

視聴覚資料
CD 15,000本
DVD 5,000本
ビデオ 1,000本

◆施設概要

敷地面積 5,725.19㎡
建築面積 2,699.21㎡
延床面積 6,165.25㎡
構造規模 地上3階、駐車場22台、駐輪場300台
総座席数 500席


クローバー施設


1階◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
1階(図新)
一般向けの資料をワンフロアに集め、広くゆとりのある空間が特徴です。閲覧席は自然光が注ぐ窓際に配し、エリアによりさまざまなタイプのイスが揃っています。喫茶室はケーキが評判で気軽にランチが楽しめます。またお弁当や飲み物の持ち込み可のフリースペースも併設しています。研究個室、対面音訳室・サポート室、YA(中高生)スペース、パソコン室など利用目的に即したスペースがあります。


1階① (左から)総合カウンター、一般書架、喫茶室

1階② 閲覧スペースはさまざまなスタイル。それぞれの場所に配されたイスも特徴的

1階③ (左から)研究個室、対面音訳室・サポート室、YAスペース

1階④
(左から)喫茶室に隣接するフリースペース、開放感あふれる読書テラス


2階◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
2階(図新)
「こども図書館」として赤ちゃんから小学生まで、保護者も一緒にゆっくりと読書の時間が楽しめます。「子育て情報支援室」は授乳室、給湯設備を完備。保護者同士の情報交換の場としても活用されています。


2階 (左から)児童書架、おはなしのへや、子育て情報支援室

3階◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
3階(図新)
区民と協働する図書館づくりの拠点となるフロアです。


3階

(左)区民活動コーナー(右)閉架書庫

クローバーここもポイント!~赤レンガ棟の歴史


北区立中央図書館(赤レンガ図書館)が建っている場所は、もともと旧日本陸軍が使用していた東京砲兵工廠銃包製造所の敷地でした。施設として使用されている赤レンガ棟も大正8年(1919年)に弾丸を製造する工場として建てられたものです。リニューアルされた北区立中央図書館では赤レンガ棟としての遺構を見ることができます。
既存のレンガ倉庫と新たな建築物が互いに際立たせ調和した建物は国際的にも高く評価されています。平成21年度グッドデザイン賞、平成23年度日本図書館協会図書館建築賞を獲得しています。


◉八幡製鉄所で製造した鉄骨ラチス柱
ラチス柱八幡製鉄所は明治34年(1901年)に日本で最初の本格的な官営製鉄所として北九州で創業。赤レンガ棟の鉄骨(ラチス柱)には八幡製鉄所で製造されたことを示す刻印が確認できます。






◉トラス構造の三角屋根

三角屋根 現在の赤レンガ棟は最新の建築技術により少ない柱で屋根を支えていますが、実は軍の工場と使用されていた時代も、少ない数の柱で屋根を支えていました。それを可能にしたのが三角形をいくつも組み合わせたトラス構造の骨組みです。赤レンガ棟はフィンクトラスという構造になっていました。現在は半分に切断されているものが大半ですが、赤レンガ棟南北の両端には一部、完形のものが見られます。

◉レンガの積み方

レンガ レンガはつなぎ目(目地)が一直線にならないよう工夫して積まれています。レンガ棟は同じ段に縦向きと横向きを交互に積み上げる「オランダ積み」で建てられています。
レンガにはその製造場所がわかるように刻印が押されているものがあります。その刻印から赤レンガ棟で使われているレンガの多くが北区や足立区といった隅田川沿岸のレンガ工場で製造されたものであることがわかっています。


クローバーここもポイント!~区民の会


平成16年(2004年)、「新中央図書館基本計画」策定の際、時代にあった北区の図書館のあり方を、利用する区民も一緒に考えようという協働型図書館に向けた理念から、平成17年(2005年)、「区民とともに歩む図書館委員会」が設置されました。この委員会は「区民とともに歩む図書館」とは「どういう図書館にするかを区民と行政が一緒に考える、一緒に創っていくシステムをもった図書館」であると提言。
平成19年(2007年)春より中央図書館は「北区図書館活動区民の会」設立準備に着手し、同年10月20日に設立しました。この会は区民が「北区立図書館」のパートナーとして活動できる非営利団体組織で、図書館でボランティア活動をする人や図書館に関心のある人が気軽に入会登録できる仕組みになっています。
今年1月12日には「区民の会」の企画・運営で、小学生向けワークショップ「親子で謎解き!中央図書館ナイトツアー」を開催。参加した親子は、探検手帳を手に夜の図書館での冒険を楽しみました。


クローバー図書館からのメッセージ


メッセージ 東京都北区

教育委員会事務局中央図書館 図書係長

大橋信夫さん


老朽化した中央図書館の新築にともなって、その移設場所として着目されたのが、十条駐屯地の東側の開放部分でした。そこには廃屋同然の赤レンガ倉庫があり、それをどうするかが議論されました。区民団体から保存活用してはどうかという話が持ち上がり、この赤レンガ倉庫を北区の図書館として活かす方向が決まりました。コンセプトは、いかに近代産業の遺構を多く残せるかということで、プロポーザル方式の入札を行い、赤レンガ部分と増設部分に違和感がないような設計を採用しました。
赤レンガ部分は暖かみのある光を取り入れ、視覚的な効果を重視しました。書架との間や高さも理想的かつ有効的に設計され、利用者にとって心地良い空間になったと思います。
こども図書館や北区の部屋、YAスペース、障害者のためのブース、女性のための空間など、それぞれ利用目的によって分割されているのも特徴です。利用者の気持ちを重視したデザインといえるでしょう。
車イスでも利用できる可動式の机や、長時間座っても疲れない、デザイン性の優れたフリッツ・ハンセン製のイスを取り入れ、いかに快適にお過ごしいただけるかにも留意しました。壁付けの棚をはじめ、フリースペースを有効利用し、違和感なく見せる工夫を図書館全体に施しています。
2階の「子育て情報支援室」には授乳室も設けました。お子さんが多少声を出しても大丈夫なようにワンルームで仕切りました。ここにくれば、子育てに必要な情報も集まります。子どもの目線とママさんの交流を目的にした2階のフロアコンセプトが、ひとつのコミュニティを形成させたのではないかと思います。
北区ならではの「北区の部屋」では専門員による地域資料の古文書の読み解きや映像アーカイブの上映会などを催しています。能動的な企画は北区への愛着を増幅させることも狙いとしています。平成19年10月に設立された「北区図書館活動区民の会」は、いろいろなボランティア団体を縦軸でひとつに束ねた団体ですが、ここでの活動は図書館の枠を超えて、多方面で注目されていくことを期待しています。過去にはバイオリンコンサートも開催して、たくさんの方にご来場していただきました。
図書館はなにをどこまでできるのか。そんな課題に取り組んでいます。ほかの図書館と違う魅力を感じていただきたいと思っています。


クローバーEDITORIAL NOTE① 図書だけではなく映像資料もアーカイブ化


もともと赤レンガ棟は旧日本陸軍の東京砲兵工廠銃包製造所の敷地に弾丸を製造する工場として大正8年(1919年)に建てられた軍事施設でした。防衛施設再編計画にともなって、赤レンガ棟を含む一部が北区へと移管されました。保存活用を求めた多くの声かけにより、平成20年(2008年)6月28日、北区立中央図書館(赤レンガ図書館)として生まれ変わりました。
1階の入り口を入ると、広々とした総合フロアに目を奪われます。1階は一般書架エリアやカフェ、フリースペースがあり、改築した赤レンガ棟と増設された部分の違和感はなく、圧巻。カフェ部分は赤レンガ棟に設けられていて、暖かみのある灯と落ち着いた雰囲気でケーキや軽食をいただけます。
一般書架のスペースは広々としていて、その左側には読書テラス、中高生のためのYAスペース、閲覧席などがあり、利用者の用途に応じて気兼ねなく利用できるよう工夫されています。とくに閲覧席は窓際に沿って設置されているので、気持ちよく読書が楽しめます。

1階奥にあるのが「北区の部屋」。北区に特化している蔵書や北区が発行している地域資料など、北区の情報を集めた部屋で、2人の非常勤専門員が古文書の読み解きなどの講座を開催しています。以前、TV中継をしたところ、評判が良かったとのことで、今後も継続させていきたいとのことです。
さらに、北区の昭和30~40年代の映像をDVD化によって保存する映像アーカイブで事業を推進。劣化した8㎜フィルムなどのメディアを再生して、地域資料として図書館でも公開しつつ収集していきたいとのことです。その企画は多角的に活用され、3月1日にはともに事業を担当している飛鳥山博物館での上映会「時間の旅 昭和30年代から現在へ」を予定。ニュース映像や家電の実物展示、北区で撮られた街並や暮らしの映像の今と昔を体験できるそうです。
そもそも映像アーカイブに関しては、膨大な地域資料をこの図書館で管理していることや区史編纂に関わった人もいたことから、区民が活用できる地域資料として図書館でも担当するようになったのだとか。「北区の部屋」の手前には、この地域の昔の航空写真や移築時に取り出したレンガ、横や上を見渡せば赤レンガ倉庫時代の鉄骨を目の当たりにでき、歴史的な観点から地域意識を促すこの図書館の姿勢がうかがえます。
北区在住でもある日本文学研究者ドナルド・キーン氏のコーナーも必見。寄贈された資料や古典文学、昔の日本に関する本など、ご本人が寄贈された貴重な本がたくさん並んでいます。キーン氏の書き込みがある資料も目にすることができます。
2階には「こども図書館」があります。読書テラスや子育て情報支援室、おはなしのへや、授乳室など、設備も充実。子ども目線で設計されているのが特徴です。おかあさんが乳母車で赤ちゃんを連れてきて、お菓子を食べたり、雑談をしてもいいように空間設計されています。「子育て情報支援室」は北区の子どものための情報がたくさん集められているので、ここにくれば“子育て”に必要な情報を得られます。
図書館の各コーナーに置かれている机やイスの色やデザインも特筆もの。机は車イスでも利用できる可動式のものを採用。スペースごとに違った色のイスは、フリッツ・ハンセン製で、汚れへの耐性や、座り心地の快適性に優れています。1階の奥にある女性雑誌のあるスペースには、花びらの形をした机やピンクのイスを設置、窓際の机上にあるライトもデザイン性が高く(時には壊されてしまうこともあるとか…)、そのひとつひとつを見てまわるのも楽しみになります。
世界初のICタグや自動貸出機もこの図書館の魅力のひとつです。1階カウンター前に設置してありますが、ブックスタンドのようになっていて、本の背に内臓されたICタグを読み取り、数秒で貸し出し処理をする優れもの。現在、3割の方が利用されているようです。
単に読書のためだけに訪れるのはもったいない気持ちになる図書館です。新しい技術を取り入れつつ、地域の歴史を大切にするコンセプトを見事に実現しています。この図書館を目当てに遠方からでも訪れる人もきっと満足させてくれるでしょう。是非足を運んでみませんか。(Tipsy chico)


北区のへや

北区の部屋

クローバーEDITORIAL NOTE② ドナルド・キーンコレクションの意義


北区中央図書館の赤レンガ棟は1919年築なのだそうだ。第一次世界大戦の終結に関するパリ講和会議の開催、イタリアでムッソリーニが「戦士のファッショ(後にファシスト党)」を結成、中国で孫文らによる中国国民党の結党など、世界は揺れていた。ちなみに日本でカルピスの販売が開始されたのも1919年なのだそうだ。
3年後の1922年、日本文化を世界に広めた外国人文学者が誕生する。ニューヨーク市の貿易商の家庭に生まれたドナルド・キーンである。彼は学生時代に「源氏物語」の英訳を読んだことをきっかけに日本文化に興味を抱き、後に「日本人の西洋発見」「日本との出会い」「百代の過客」「明治天皇」などの著書を著す。日米開戦時は20歳。「リメンバーパールハーバー」に最も染まる年代である。太平洋戦線では海軍に勤務し、日本語の通訳官も務めたりもしたが、キーンはポピュリズムに付和雷同する若者ではなかったようだ。1953年には京都大学大学院に留学、三島由紀夫や阿部公房らと親交を深める。
1992年にコロンビア大学の名誉教授に就任するが、2011年3月11日の東日本大震災を契機に、コロンビア大学を退官後、日本国籍を取得して、日本永住を表明。かねてからの日本での滞在地、北区西ヶ原で暮らしている。
北区立中央図書館にはキーンのコレクションコーナーを設置しているが、そこにはニューヨークのマンションにあった蔵書が並ぶ。90年におよぶ時の流れの中で邂逅した人と建物。コレクションコーナーは波乱の時代を忘れさせる静謐な空気に満ちていた。 (上原由迩)


ドナルド・キーン
ドナルド・キーンコレクション



ビル北区立中央図書館(赤レンガ図書館)


利用案内
休館日第1・第3・第5月曜日
      館内整理日(3・12月を除く、毎月第4木曜日)
      年末年始(12月29日~1月4日)
      3月31日(ただし、土・日・第5月曜日の場合、その前の金曜日)
開館時間火~土曜日/第2・第4月曜日 9:00~20:00
        日曜・祝日 9:00~17:00


アクセス
住所東京都北区十条台1-2-5 地図
電話番号03-5993-1125
ホームページ

http://www.city.kita.tokyo.jp/
http://www.library.city.kita.tokyo.jp/



取材協力:北区立中央図書館 取材:湘南文学舎