15世紀から描かれ続けてきた「聖アントニウスの誘惑」という題材は、美術・文学だけでなく、音楽の世界にも見つけることができる。![]()
「イーゼンハイム祭壇画(第2面)」
マティアス・グリューネヴァルトの名で知られる16世紀初期にドイツで活躍した画家の畢生の大作が「イーゼンハイム祭壇画」である。これに想を得て作曲したのが、20世紀前半のドイツ作曲家ヒンデミットであった。![]()
パウル・ヒンデミット(1895-1963)
オペラ化の前に纏められたのが交響曲「画家マティス」(1934)で、ヒンデミットの代表作となっている。1934年3月にフルトヴェングラー指揮によって初演されたのだが、ナチスを刺激する結果になってヒンデミットに対する攻撃が強まり、擁護するフルトヴェングラーともども、きな臭い歴史の一コマとなった(いわゆる「ヒンデミット事件」である。)。
この交響曲は、3つの楽章からなる。
第1楽章:「天使の合奏」・・・オペラの前奏曲にあたる。
第2楽章:「埋葬」・・・オペラの第七場、最終場面への間奏曲にあたる。
第3楽章:「聖アントニウスの誘惑」・・・オペラの第六場、マティスが見る幻影の場面の音楽を自由に再構成している。
終楽章に問題の題材が現れるのだ。
ディスクは、これを聴いてみよう!![]()
ピエール・モントゥー&フィラデルフィア管(1960L)

「画家マチス」はデンマーク放送響との62年のライヴが出ておりましたが、今後はステレオ録音の当演奏に軍配が上がることでしょう。オケを自由自在に操るモントゥ―の魔法のような指揮棒が閃きます。第3楽章などはアメリカの大都会の喧騒すら想起させるカッコいいスタイリッシュな演奏。(ミューズ貿易)
(この裏面画像は、Premirre盤)
このフィラデルフィア・ライヴを聴いていて、ヒンデミットは予感していたのだろうなあ・・・って。
ヒトラーが誘惑に負けることを!![]()
何がヒトラーを誘惑したのだろうか・・・
私がヒトラーの映画を作るとしたら、エンディングにこの第三楽章をたっぷりと流すだろう!![]()
モントゥーの鬼気迫るライヴは終演後に沸き起こった拍手も収録されている。
フルトヴェングラーによる初演が大好評だったのも想像できるわ!![]()
なお、ヒンデミットと同年生まれのイギリスの音楽評論家で、シベリウス研究の世界的権威セシル・グレイ(1895-1951)にも「聖アントニウスの誘惑」(1937)という作品がある。
(残念ながら、音源を探し出すことができなくて未聴)