真言宗での修行の末、体得した

「祈祷師」という肩書きを持つ

御住職の言葉には、ご自身が

経験された「重み」があった。



「ワシらのように得度を積むため

に修験道として厳しい修行に臨んだ

者でも霊や念の扱いは容易ではない。」



御住職の話はこんな風だった…。



祈祷師や霊媒師、占い師の様に霊的な

力を必要とする職業は、その人に憑いた

霊や念と向き合わねばならない分
自らを危険にさらすリスクを伴う。




特にあなたの様に、人の身体に触れる

「整体師」で霊的な力を使っている人

は、結局、患者の肉体的な問題を整体

の技術で治すと同時に、その方の「念」

(心の痛みや苦しみ)を自らに取り込む

事によって和らげるという行為をしている。


つまり

 

 

その患者さんの身代わりに自分の体に
取り去るべき「念」を掃除機の様に

吸い込んでいるわけだと。



「整体を終えたあと、動けないくらい

しんどい時があるじゃろ?」


一日で4人程整体すると、体力的では

ない「疲れた」というよりも「しんどい」

と言うほうが当てはまる。


実際、立っていられない程の睡魔や

倦怠感に襲われて動けないまま、帰宅

する事も出来ず、梅田のサロンに泊まる
こともしばしばだった。



ご住職は続けた。



「結論的に言えば、自らに取り込んだ

「念」を出しきれていない分、施術を

する度に丹田(へそから数センチの下

の部位)にどんどん溜まっていて

まさに憑依されているのと同じ状態に

なっておる。

具体的には腸の機能がかなり低下して

いるせいで冷たくなっていた。」



「えっ…マジすか。憑依って?

動物とか???」思わず聞き返す。



「動物ではない。人間の持つ執着や

嫉妬、後悔や怒り、妬みといった

感情が念となって自分の中や人に

とり憑いて波長を下げる。そういった
小さな念が積もって山になるわけじゃ。」


「霊能者や占い師に早死にが多い。

その念がどんどん溜まって、へそから

上に上がって行き、やがて心臓をやられ

死に至る。

じゃが不思議な事に、あなたはこれだけ

丹田より下に「念」が溜まっておるのにも

関わらず、丹田より上は全くもって問題が

ない。」



「えっ…マジすか。それは何でですか??」
またまた聞き返す。



「うーん。わしにも…わからん。

ご自身の霊的な力の影響で守られている
のかも知れんな。」



御住職にもわからん事があるのかと

思いながら、やっぱり正直な人だと
理解した。



「とにかく、自分に溜まった「念」

の出し方を教えるから、毎日やりなさい。

そうしたら自然に体の機能は正常に戻る。


なんなら自分、坊さんにならへんか?

名前を貰って得度を積めばもっと自分の

力を制御できる。別に頭剃らんでもええし。」



何故か・・

お坊さんの勧誘を受けてしまった。



「取り合えずは結構ですから…あははは。」

と逃げて念を出す呼吸法を伝授して頂いた。





お茶を一服頂いた後、では本題に入るぞ

と言わんばかりに御住職が身構えた。
 

 

 

 

つづく