BEATはホットに、そしてクールに続いていく――古田たかし・井上富雄+佐野元春 | Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

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Jポップスの黄金時代は80年代から始まった。

そんな時代を活写した幻の音楽雑誌『MUSIC STEADY』をネットで再現します。

実は、本原稿は7月7日(日)にFBのタイムラインに公開したものだが、私が行けなかったコンサートも無事に終わり、あとは横浜の追加公演のみになった。7月12日(金)と13日(土)に東京「Zepp Haneda (TOKYO)」で開催された“東京2 DAYS”を終えたいまならネタバレにならず、かつ、次の楽しみとして読んでいただけると考えて、敢えて掲載する。

 

8月1日(木)には神奈川「KT Zepp Yokohama」で佐野元春 & ザ・コヨーテバンドの「2024年初夏、Zepp Tourで逢いましょう」の追加公演、8月8日(木)には東京・祐天寺「FJ's」で笠原あやの(Vc)と西岡ヒデロー(Per)をゲストに招き、井上富雄のアコースティックライブ『Peaceville Vol.13 井上富雄アコーステックライブ with 笠原あやの(Vc)と西岡ヒデロー(Per)』が行われる。予習・復習として、ご覧になっていただければ幸いだ。

 

 

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こんなことって、あるんだな――その前日、古田たかし、井上富雄、長田進というメンバーが揃う、ザ・ハートランド、ザ・ホーボーキングバンド度の高いステージを見た翌日、その棟梁たる佐野元春が率いる佐野元春& ザ・コヨーテバンドのステージを見るなんて。自分自身が日程をやりくりしているので、自ら仕組んだことだが、この繋がりは縁みたいなものを感じる。


7月5日(金)に東京・下北沢「440」で古田たかしと井上富雄の“W誕生祭6663”ライブがあり、7月6日(土)に宮城・仙台「SENDAI GIGS」で佐野元春 & ザ・コヨーテ・バンドの「2024年初夏、Zepp Tourで逢いましょう」の仙台公演がある。なかなかの並びだろう。この“二連荘”は外せない。

 

7月12日(金)と13日(土)の東京「Zepp Haneda (TOKYO)」の東京公演は随分前から予定があり、行けないことはわかっていた。ならば地方公演を見に行くしかない。そんな中、日程的、行程的にも合致した仙台へ行くしかなかった。体重が増えても、フットワークは軽いのが私だ。お気に入りのリュックに最低限のものは予め詰め込み、シューズは履きふるしではなく、履き慣らしている。常に旅の支度ができているのだ(!?)。

 

 

古田たかしは7月6日生まれ今年66歳、井上富雄は7月4日生まれ今年63歳になった。7月5日(金)に“W誕生祭6663”が行われた。66歳と63歳で“ムムムサー”である。音楽一家のホームパーティのような親しみやすく、楽しいライブだったが、その音楽一家がすご過ぎる。プログレやジャズ、フュージョンなどの影響を受けた、難易度の高い楽曲をこともなげにこなす。

音楽的な実績や知名度はいうまでもないが、その音楽性の豊富さと音楽的技術の高さ。"CAJUN MOON BAND(ケイジャンムーンバンド)や佐野元春&ザ・ホーボーキングバンド(「Smoke & Blue」)の仲間達が集まっているのだから、当たり前といえば当たり前だろう。そんな座組が音楽性以前に実はご近所さんで、学区も同じという地縁から始まっていることに驚く。縁とは異なものだろう。暫し地元民限定の地元噺に花が咲くこともあった(笑)。

また、ご近所さんゆえかもしれないが、普段、あまり明かされない、何故、井上がも北九州時代の仲間からうめづと呼ばれるのかという、“うめづの謎”(!?)まで披露された。


そんなリラックスした楽しさもありつつ、その音楽はいうまでもなく本物。高度なことをこともさりげなく、やりつつ、難解さを含め、パズルを解くように音楽の醍醐味を体感させてくれる。


さらに“ローリングペドラーズツアー”でもお馴染み、ANZAiFURUTAの盟友、安齋肇もバースデーケーキを持って、ステージに登場。流石、“空耳アワー”など、バラエティの常連だっただけあり、トークとシャウトで会場を沸かし、大いに盛り上げる。そのパフォーマンスは圧巻だったが、さりげなく二人に主役を譲るところが流石、年長者、年の功だろう。




そんな楽しいホームパーティの翌日は仙台で佐野元春&& ザ・コヨーテバンドの仙台公演を見る。会場の「SENDAI GIGS」は仙台の地下鉄・東西線の「荒井駅」にある。仙台からは10分ほど。ZEPなどと同様、ガレージスタイルのベニューである。ライブハウスと言うには大きく、ホールと言うには大きくない。ある意味、最適な場所だろう。収容人数は1500名を超える(シート設定の場合である)。ドリンクチケットになるオリジナルピックを引き換えず、持ち帰ることができたり、Tシャツやステッカーなど、たくさんのオリジナルグッズは独特の雰囲気がある。

また、後で知ったことだが、同会場のバックヤードにはトレーニング場や日本のロックのアナログで聞く名盤コーナー、お祭り広場があるという。お祭りというか、縁日のような遊戯的な空間がある。遊具や玩具があり、綿あめやたこ焼きが出てきそうな雰囲気である(実際、綿あめを作る機会がある)。佐野はスタッフの描いたたくさんの似顔絵が自分達を迎えてくれたと言っていたが、お手製の微笑ましい色紙大の似顔絵があったそうだ。“おもてなし”の心に溢れたところで、インスタなどで公開しているミュージシャンも少なくない。

この日のチケットは既にソールドアウトで多くの方が会場に詰めかける。宮城だけではなく、青森や岩手、栃木、群馬など、近県からも駆けつける。駐車場には宮城だけでなく、県外ナンバープを付けた車がたくさん並ぶ。

ツアーは、まだ、続く。それゆえ、詳述はできないが、ツアー直前、6月5日に何故、佐野元春が「Youngbloods」(New Recording 2024)を配信リリースしたか、その答えがあるかもしれない。当然の如く、懐古や郷愁ではない。勿論、それを否定しないが、敢えて再定義することで、名曲達はその普遍性を獲得し、今と言う時代に素知らぬ顔をして共鳴していくのだ。
セットリストを覗き見した人はおわかりかと思うが、徹頭徹尾、ザ・コヨーテバンドの新しい名曲達がラインナップされ、それらは世代を超え、多くの支持者を得る。会場には同年代と思しきリスナーだけでなく、明らかに新世代のリスナーも少なくない。同窓会は佐野元春には似合わない。そんなリスナーを集めること、それは同世代にとっては誇りではないだろうか。懐かしのヒット曲を無為に垂れ流す、それも悪くないが、それでは佐野元春らしくない。常に時代の波頭に立ち、私達を鼓舞し牽引していく、そんな姿こそ、彼に相応しい。

佐野元春はこの日、ステージから何度も“仙台は暑いよ”と言った。各所で最高気温を更新、熱中症患者が急増するなど、それだけ“HOT”ということだろう。7月6日(土)の宮城「SENDAI GIGS」は暑い、いや熱い観客に煽られ、コヨーテ達は名曲達を更なる高みへと導く。過去の名曲達も再定義、時代を超え、いまに鳴らす。そんな名曲達が共振・共鳴していく様はたまらなくクールである。佐野自らが“BEAT GOES ON”を実践する。まだ、“路上”に立ち、その物語に新しい命を与えていく。

来年、2025年はデビュー45周年になる。活動歴が45年になるというのに佐野元春は進化し続けている。その日、来年の企みの一部が公開された。とてもワクワクさせられるものだ。ツアー「2024年初夏、Zepp Tourで逢いましょう」は、まだ、続いていく。このツアーは2025年のツアーに橋を架ける。必見だろう。是非、足を運んで欲しい。


https://fjslive.com/2024/08/08/peaceville-vol-13-%E4%BA%95%E4%B8%8A%E5%AF%8C%E9%9B%84%E3%82%A2%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%96-with-%E7%AC%A0%E5%8E%9F%E3%81%82%E3%82%84/

 

 

 

https://www.moto.co.jp/features/zepp-tour-2024/