「デンティスト」(1996)

 

怒りの矛先を間違えた歯医者さんが巻き起こす惨劇をU-NEXTで観ました。初見。

 

 

監督はブライアン・ユズナ。予告編はコチラ

 

イケオジの歯科医アラン(コービン・バーンセン)は、LAのプール付き豪邸でブロンド美人妻ブルックと優雅に暮らす勝ち組野郎。ただ、度を越した潔癖症なところがあって、ちょっとでも清潔じゃない点を見つけると、妻をネチネチと問い詰めるモラハラ夫でもあります。二人の結婚記念日の朝に、夫が出かけたと思っている妻がプール清掃員マット浮気している現場を見てしまったアラン。当然、激オコです。小汚い格好をした清掃員の不潔なブツを口に含んでいたこともアランの怒りに拍車をかけます。アランは拳銃を取り出して、こっそりとマットを尾行。別の家の作業に出向いたマットは、その家の主婦とも浮気をし始めます。覗き見してる時にその家の飼い犬に襲われて、咄嗟に銃殺してしまうアラン。その場を立ち去って、何事もなかったように仕事場に戻るも、冷静さを失ったアランは診察に来たチビッ子の治療中、誤って歯に器具をぶっ刺してしまう初歩的なミスを犯してしまいます。ここから、アランの暴走はエスカレート。

 

次の患者であるミスコン優勝者麻酔で眠らせて妻に誘惑される妄想に駆られてパンストを脱がせてしまったアラン。付き添いのマネージャー(マーク・ラファロ)に激怒される騒ぎとなったので、いったん病院は休診に。自宅に戻った夜には、妻のブルック歯を引っこ抜いて、舌を切り落とす制裁を加えます。翌朝、犬の死を捜査しているLA市警ギブス刑事(ケン・フォリー)の聞き込みに対応した後、家にやって来た浮気相手のマットを殺害。診療中の様子がおかしいアランに気づいた歯科助手の指摘に逆ギレして絞殺。さらに、監査をちらつかせて歯の治療を強要する税務官のおっさん口の中をグチャグチャにして、現場を見た歯科助手注射で殺害。同じ頃、犬を撃った弾丸がアランの銃の物だと断定したギブス刑事がアラン不在の自宅に踏み込むと、マークの死体と監禁されたブルックを発見。一方の病院では、歯列矯正器具を外しに来た少女サラにもマッドデンティストの魔の手が忍び寄っていて・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「The Dentist」。が浮気したくなるのも分かるような極度の強迫性障害をデフォルメした歯科医の狂気。「ブルックという名の女はセックスが上手い」とナゾの偏見を口走る汚職税務官はさておき、罪のない人たちを次々と殺めていくアラン哀しみを宿らせた名演がムチャクチャな展開にリアルさを与えています。どこかで観たと思ったら、「メジャー・リーグ」(1989)の俳優さんでした。直接的な残酷シーンよりも、歯の痛みを想像させる描写の方が刺激的。もう少し焦らして恐怖感を増幅させてもよかったかも。最後に狙われるサラちゃん(特に美少女でもない)のシークエンスでは、ヘンタイに追われるサスペンスで盛り上げる要素あり。人間関係や人物像設定の書き込みがしっかりしている点はポイント高し。監督は「ZOMBIO/死霊のしたたり」(1985)のプロデューサーで、脚本にはスチュアート・ゴードン(当初は監督する予定)の名前もあります。犬殺し捜査からキチガイ発見にたどり着く刑事は「ゾンビ」(1978)の俳優さん。ほかに無名時代のマーク・ラファロも出演してました。