「こいつで、今夜もイート・イット ~アル・ヤンコビック物語~」(2022)

 

アル・ヤンコビックの自伝風デタラメ映画をWOWOWオンデマンドで観ました。

 

 

監督はエリック・アッペル。予告編はコチラ

 

フツーの家庭に育ったアルフレッドには歌手になりたいという夢がありましたが、工場勤務のガンコ親父の猛反対にあうのは必至なので、自分の夢を封印して生きる少年時代を過ごしていました。ただ、優しい母に買ってもらったアコーディオンを自宅でこっそりと練習しながら、替え歌作りに没頭。それも父に見つかって、アコーディオンはぶっ壊されます。大学生になって親元を離れたアル(ダニエル・ラドクリフ)はザ・ナックの「マイ・シャローナ」の替え歌「マイ・ボローニャ」を友人に披露すると大ウケ。地元ラジオ番組に曲を投稿すると、すぐに採用されて大評判。そのまま、パロディソング歌手としてデビューすると、リリースする替え歌たちは20か国で大ヒット。大統領やローマ教皇、コロンビアの麻薬王エスコバルも大ファンになるくらい。

 

オリジナル曲も売上が伸びる相乗効果があるため、替え歌を作ってほしいというオファーもひっきりなし。マドンナ(エヴァン・レイチェル・ウッド)もその一人で、意気投合した二人は恋仲になります。しかし、最も認めてほしい存在の両親が自分の成功に関心がなく自身のアイデンティティが揺らぎ出します。次のジェームズ・ボンド役のオファーが来ても、誰かの二番煎じになることを嫌います。とうとう替え歌では飽き足らなくなったアルは、オリジナル曲で勝負するアーティストに方向転換。自信作「今夜もイート・イット」は大ヒット。今度は、マイケル・ジャクソンが「今夜はビート・イット」という替え歌をリリースする事態に発展。この後、仲間との決別、エスコバルとの対決、父が勤める工場勤務への転職華麗なる返り咲き暗殺によるへと続いていって・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「Weird: The Al Yankovic Story」。"Weird"は"おかしな"という意味で、アル・ヤンコビックの接頭語につく代名詞。日本でも「ひょうきん族」に出ていた頃から1990年代までは活動していた記憶があります。2000年代に入っても精力的に活躍してたんですね。しょーもないパロディ歌手といったイメージですが、グラミー賞(最優秀コメディアルバム賞)を獲ってるのがエライとすれば、日本のほとんどのアーティストより国際的には格上の存在であります。そんな彼が、死に至るまでのデタラメ成功譚を自らプロデュース。アル・ヤンコビック本人もレコード会社社長役で出演。両親が反対する幼少期から実人生のエピソードとは違っていて、パロディ作家らしいホラ話が爽快です。監督のエリック・アッペルはコメディ畑の人のようで、ケビン・コスナーやレイ・リオッタも出演していて、ロックアウトして中断していたNFLをテーマにした短編ショートパロディ映画「Field of Dreams 2: Lockout」(2011)は面白かったです。

 

マドンナ以外にも、クイーンのメンバーに即興で替え歌を作ってみろと言われる屋外パーティー会場には、ダリやウォーホル(コナン・オブライエン)ディヴァインやピーウィー・ハーマンやタイニー・ティムウルフマンジャック(ジャック・ブラック)やアリス・クーパーやギャラガーなどのニセモノがゾロゾロと登場。当時のアメリカのカルチャーに精通してないので、見落としてるキャラも沢山いそうです。アル・ヤンコビックを演じるのは、「ハリー・ポッター」でシリーズでついてしまったイメージを払拭するため、個性的な映画に積極的に出演し続けているダニエル・ラドクリフ。マドンナ役にはバイセクシャルであることを公言しているエヴァン・レイチェル・ウッド。ヤンコビックを世に送り出したドクター・ディメント(アメリカでは超有名なラジオ番組パーソナリティ)役にはレイン・ウィルソン。徹底したバカバカしさの手数で攻めている映画でございました。