「荒野のドラゴン」(1973)

 

空手をブレンドした異色のマカロニウエスタンを観ました。

 

 

監督はマリオ・カイアーノ。予告編はコチラ

 

サンフランシスコに住む青年ジョー(チェン・リー)が大志を抱いてテキサスに向かいます。黄色人種への白人たちの風当たりは厳しく、なけなしの金で乗った駅馬車でも座席は与えられず、荷物置き場での旅を余儀なくされます。さびれた街で叩き落とされて、とりあえず仕事を捜し始めるも、誰も雇ってはくれません。ようやく薄給で雇ってくれる牧場の下宿先となるボロ小屋では、他の従業員たちにからかわれて所持金を奪われそうになります。しかし、ジョーには達人級の空手の腕前があり、差別的に扱う者たちが度を過ぎた行動に出ると、普段の温和な物腰からは想像できない超人的な動きで相手をギャフンと言わせますその腕前を買われて、用心棒みたいな職を得ることができたジョー。しかし、雇い主は周辺地域を牛耳る悪徳ボスのスペンサーでした。安く買い漁ったメキシコ人を野に放って殺しの標的にする遊びを目の前にして、悪党一味を制止してボコボコにするジョー

 

その日からスペンサーの送り込んだ刺客から命を狙われる日々が続きます。殺人ゲームで生き延びたメキシコ人のじいさんを助けた後、一度はスペンサーの手下に捕われの身となって闘牛と戦わされるピンチ難なく倒して脱出に成功。逃げ延びて廃屋に辿りつくと、若くて美しいメキシコ娘クリスチーナが訪れます。ジョーが助けた老人の娘で、恩人のジョーを助けに来たのですが、かえって足手まといの存在になる展開に。やがて、得意のフライングチョップ刺客を1人ずつ片づけてるうちに、殺した獲物の頭皮を剥ぐ殺し屋ジャック(クラウス・キンスキー)襲われてクリスチーナの頭皮にも大ピンチが訪れます。彼もあっさりと撃退した後、スペンサー最後に送り込んだ刺客は、かつて同じ道場で修行していたミクリヤ(ミクリヤ・カツトシ)免許皆伝の証となる赤い炎の刻印を持つ者どうしの命を懸けた死闘が始まるのであった・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「Il mio nome è Shangai Joe」。"俺の名はシャンハイ・ジョー"という意味。「燃えよドラゴン」の大ヒットに便乗した異色作。イタリア人にとっては中国も日本も一緒みたいなもんなので、いろいろごっちゃになってます。冒頭でチャイナタウンでクリーニング業を営む中国系移民たちの姿。カウボーイに憧れてテキサスに向かったジョーは、バカにする白人たちにフォークを投げつけたり目潰しを食らわしたり、優しい顔をしてマカロニウエスタンらしい残虐行為をぶちかまします。なぜか華麗なカードさばきも披露。奇天烈な漢字フォントでクレジットされている主演のチェン・リーは生粋の日本人で、全てのスタントを自演。早川明心の名前で志穂美悦子の「帰って来た女必殺拳」(1975)にも出演しています。

 

最後の宿命の対決で悪党を演じるミクリヤ・カツトシも日本人で、現在でもイタリアで空手道場を経営されてる方のようです。西部劇らしい空間で素手での戦いを経て、チャンバラでもバトル右腕を切断されたミクリヤはようやく銃を取り出しますが弾丸を素手で受け止めたジョーが間髪入れずに反撃をかましてミクリヤの心臓をえぐってジ・エンド。ちょっといい仲になったクリスチーナに別れを告げてどこかに去っていきます。映画が1時間ほど過ぎてから、満を持して登場するのが怪優クラウス・キンスキー剥ぎ取った人間の頭皮を人形の頭に被せて喜んでいるヘンタイ殺人鬼です。顔力のインパクトはさすがで、特徴のないおっさん達だらけの単調な内容に強烈な彩りを添えてる点も見どころの珍品でございました。