【スーパーヒーロー】 8. 普通の日々 | 日々コギ精進(仮)

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レオ…
ティーダ…
いつまでも君達を愛していますよ…

《普通の日々》


『レオを看取るまでは松本を離れない』


彼を迎えてしばらくの時が過ぎ、高揚した楽しい日々がいつの間にか終わり、”普通の日々”が始まっていた。そして”普通の日々”がどんどん積み重なっていくうちにそんな”誓い”を胸に抱くようになっていった。


”普通の日々”。朝起きて階下に降りてご飯を食べて軽くおさんぽする。学校へ行き、帰宅したら直ぐにおさんぽ。晩御飯を食べた後に勉強。その合間に彼と遊ぶ。夜に軽めのおさんぽをして寝る。特段何も起こらない日々。


ドッグフード一粒を両手のどちらかに握って隠して入ってる方を当てさせるゲームはよくやった。「どっちだ?」とやると彼は入ってると思う拳に”お手”をした。当たった時には開いた掌の上にドッグフードがあるが、彼はそれを食べずに「もう1回やろ!」って身体を左右に少し揺さぶる。そのゲームは彼の気が済むまで何回も何回も繰り返された。ドッグフードをガン無視して「どっちに入ってるかゲーム」自体を楽しむ犬。今なら動画サイトで広く世間に見せたいくらいの珍しく愉快なことだと思うのだが、当時の私には面倒臭いなぁと思うことでもあり、それもまた”普通の日々”の中のマンネリの一部だった。


”普通の日々”の中には稀に特別なことも起こった。

どちらかというと”事件”なのだが。


レオ。君とはブーブー(ドライブのこと)でいろいろな場所へ行ったね。キノコ狩りの時に山中に放牧したけどしばらくして視界に君が見えなかった時は背筋が寒くなったんだよ? 大声で名前を呼んだら藪の中から飛び出してきたね。名前を呼べば戻ってくるということが僕はとっても嬉しかったよ。帰宅したらマダニだらけでまた背筋が寒くなったけどね。


レオ。自宅1階の駐車場のシャッターを開け閉めする間に君が外に締め出されちゃったこともあったよね。10秒後くらいにそれに気づいて大声で「レオー!レオー!」と叫んでさ。慌てて玄関のドアを開けたらそこにチョコンとおすわりしてたよね。君が居なくなったのはたかだか10秒そこらだけどさ、泣きそうなくらい心配したんだよ?


”普通の日々”を積み重ねる中で彼の存在がどんどん大きくなっていき、愛おしさがどんどん増していき、彼のことをとてもとても大切に思うようになった。そしてその分だけ彼を失うことへの恐怖もとても大きくなった。だからちょっとした事件でも肝を冷やしたり、背筋が寒くなったり、彼のことを想うと泣いたり、苦しんだりするようになった。そんな様々な想い、大きな想いが形になったものが”誓い”になったのだと思う。


あの頃は”普通の日々”=”マンネリでつまらない日々”だと思っていた。でも、もしあの頃に戻れるのなら、たとえ全く同じ”普通の日々”を過ごすだけだったとしても当時よりも心温かく過ごせる思う。それは”普通の日々”は実はとても幸せなことなのだと今は知っているからだ。”普通の日々”=”かけがえのない日々”だと知っているからだ。


面白い時。楽しい時。大笑いする時。面倒臭いなぁと思ってしまう時。病気の時。涙が出てしまう時。不安な時。心に彫刻刀で削ってあるような強烈な特別な想い出ではなくて、多くの時が流れた後に「ああ、そんなこともあったなぁ」と朧げながらに想い出せるような、そんな”普通の日々”の出来事。私はそれももっともっと大切にしなければいけなかった。そうすれば”誓い”ももっともっと大切にしていたはずだ。それなのに私は


つづく


※『どっちに入ってる?ゲームをするレオ』

 手を開いても中身を食べないワンコって珍しいですよね?

 コーギーなんて手を開いた瞬時に無くなりますよ?