編集の上再掲

地元の市民会館で小三治の独演会を聴く。
8月のチケット発売初日に市民会館の事務所に並んで買ったので2列目で聴けた。
8時15分に買いに行ったのに長蛇の列で、小三治人気がこんな田舎にも浸透しているのだなあと改めて思った。
本当の芸にテレビの露出は必要ないんだね。
やたらテレビで自分の公演を宣伝する芸能人を見かけるが、そんなに告知が必要なのかと思うよ。
チケット買った後も寄席で小三治聴いたりしていたけれど、やはり独演会は楽しみにしていた。
さてこの日の演目は「初天神」と「一眼国」
前者が1時間4分で後者が57分(笑)
勿論ほとんど枕。
小三治の場合ネタがどれであっても絶品ですぐ引き込まれる。
しかしたいがい他の会やテレビで聴いているので、それはそれで楽しみだが興味はやはり枕にある。
寄席の小三治も良いが、独演会の小三治は実にのびのびやってて楽しそうだ。
前回は電車で来て駅のスターバックスでコーヒー飲んで徒歩で(15分はかかる)来たと言ってた。
スターバックスで見た隣のテーブルの様子が街の風景描写にもなっていて、これは寄席で聴けないなと嬉しかったものだ。
今回地元ならではの出来事はというと、話し始めて間もなく雷が驚くほど大きな音で鳴ったこと。
全員ぎょっとして沈黙。
「あたし、なんかいけないこと言いました?」(爆笑)
「あたしが行くホールで今時雷がこんなに聞えるホールはありませんよ。」
休憩後この音が雷じゃなかったと話し始め、実は空調だったと。
「長いこと空調を使う必要があるほど人が入らなかった」らしい。
古い施設が笑いのネタになるなんて、地方の独演会ならではだ。
しかし感心したのはこの古いホールの照明の美しさで、この会に対する意欲を感じたな。

♪バリバリ、夕張!
これ昔小三治が北海道限定でやってたテレビコマーシャル。
今は破産した夕張市が観光客を呼ぼうと作ったもので、スキーをやってる小三治、オートバイに乗ってる小三治、家族でプラネタリウムに感心する小三治が映っている、らしい。
それにしても小三治の笑顔はCMに似合わない。
かぶさる歌も笑顔に似合わない、と思う。
でも観たい。
このときのギャラで家族そろってバリに行き最高級ホテルのVIPルームに泊まったそうだ。
そしてうっかり飲んだ水道の水で、一番下の娘以外全員が腹を壊して、日本に帰るや病院送りに。
バリバリじゃなくてビリビリになったというオチだが、これは水に凝ってるという話から始まったエピソードだ。
愛飲しているのはヴォルビックだが地方でそれがなかったので、某メーカーの「○アルプスの天然水」を福岡で買ったら阿蘇の水を使っていてこれが旨い。
広島で同じもの買ったら大山の水を使っていた。
北海道で買ったら・・・・○アルプスの水を使っていた、という話。
この人の物にこだわり、とことん凝る話は本でも読めるが実に面白い。
そうそう、夕張の話が出たときに脱線して映画「幸せの黄色いハンカチ」のエンディングが素晴らしく何度観ても涙がブヮッと出てくると言い、そのストーリーを話し始めた。
そして最後のところに来ると絶句し「・・・・もうダメっ。ほらね。」と涙を拭いた。
客は爆笑ともらい泣き。
こんな落語家いるだろうか。
実に高座でくつろいでいる(かのように見える)
かつてアルフレッド・コルトーが高齢となりあまり目も見えず、やっとピアノのあるところまでよたよたとたどり着いたかと思うと、座るやいなや姿勢がシャンとし、見事な演奏をした、とピアノの師匠に伺った事がある。
ホルショフスキーは93歳の演奏を聴いたがやはりそうだった。
彼らはピアノの前が一番楽なのだ。
70歳の小三治は足取りはしっかりしているし、まだまだお若いが、すでにコルトーやホルショフスキーの域に達しているに違いない。