ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-初診時
晴ちゃんは8歳雌のコーギー。

右第2乳腺部のしこりを切除したところ乳腺腺癌と診断された。

手術から1ヶ月後に腫術創の横の脇の下にしこりを認め、

再発または転移が疑われた。

オーナーは藁にもすがる思いでホメオパシー療法を受けていたが、

半年後にしこりが急速増大したため当院へ来院した。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-側面

初診時、右腋窩部皮下にφ7×5cm大の巨大な腫瘤を認めた。

乳腺腺癌の腫術創への再発は認めず、明らかな肺転移も認めなかった。

WHOの悪性腫瘍の分類では

T0N1M0 ステージ4の悪性乳腺腫瘍のリンパ節転移が疑われた。

転移病巣は巨大であったが触診所見より切除可能と判断し、

対症的リンパ節廓清術と補助的化学療法をお勧めした。


腫瘤は周囲との固着は軽度であり、慎重に剥離を行った。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-剥離
腫瘤底部に入り込む栄養血管の処理を行い摘出した。

腫瘤の急速増大と発情の時期が関連していたため、

同時に卵巣子宮摘出術も実施した。




ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-術後2日

手術2日後には術創周囲に軽度腫脹が認められたものの

経過は良好でドレインチューブを抜去し、翌日退院した。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-切除

病理組織検査では乳腺腺癌の腋窩リンパ節病巣と診断された。

腫瘤は薄い偽膜に被われており、

切除辺縁には腫瘍細胞は認めなかった。

同時に切除した卵巣には黄体形成が認められ

ホルモンの分泌が示唆された。


術後の補助療法として、

QOL(生活の質)を落とさない範囲での化学療法を希望され、

術後10日の抜糸時より

3週間に一度の低用量カルボプラチン投与と

ピロキシカムの投与を開始した。



ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-術後3カ月術創

現在、手術から4ヵ月。

術創部の再発や遠隔転移を認めず、

非常に元気に過ごしている。

化学療法による副作用も一切認められず、

3週間に一回の抗がん剤治療を継続中である。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-術後3カ月全身