子供の頃から自分たちの使う教室やトイレの掃除をするのが当然な日本人には、
そんなに抵抗もないことなのだが、
西欧では小学校の頃から普通清掃は、清掃員がするものである。
なので、全員が、総支店長の発表にショックを受けたのは間違いない。
何より、私たちの店舗は大変大きく、開店時間しか働けないため、
在庫出し展示から接客、レジ、電話取り、掃除機かけ、などなどを8時間のうちにやらねばならない。
今でも、どれも完遂するのは絶対無理。
つまりどれも、エエコロ加減にやっているのである。
そこにトイレ掃除まで入るのは、どう考えても物理的に無理なのだ。
それは誰もがわかっている。
だからロシア人の言うことは100%正しいのだが、
彼女は、だれもが気づく大きな間違いを犯した。
反論する時と場所、そして販売員の立場を超えた発言をしたことである。
仮にも総支店長という人に対し、
18歳の若者からいるミーティングで、彼女は完璧に彼の顔に泥を塗ってしまったのだ。
『トイレ掃除なんて、絶対にやりません、クリーナーを雇うべきです。』
『私たちの支店はNZで一番の売り上げ高を誇っている。お金はあるはず。本社から、XXドルという必要経費が出ているはずでしょう。それを使えばいいじゃない。』
彼女が、XXドルというのをどこで知ったのか知らないが、
これはまずかった。
『 XXドルは一体どこへ消えているの?』
とまで言ってしまっては、店長たちで勝手に使っている、というニュアンスまで入ってしまったからだ。
鬼の形相になった総支店長は、
わかった、じゃあ君の番は僕がやるからいい。
とだけ言った。
全員、固まった。
そのあと、彼女は総支店長と個人的にも話したようだが、
その夜また私に電話をかけてきて、
人事に報告する!労働基準局に電話するわ!と息巻いていた。
昨年、モラルハラスメントを受けた時は、他の人からの同情もあったのだが、
今回のことでは、私もさすがに彼女の傲慢さに同意できなかった。