もう叶わないって分かってる
でももう少しだけ あと1回だけ 貴方の時間を独占させてください
[3.20 23:50]
「さっむ…」
口を開くと白い息が空へと登ってゆく
ベランダで携帯を片手に私は空を見る
さすが田舎 今日も綺麗な星空
「やりますかー」
ベランダの手すりに腕を乗せ 私は携帯を操作する
すーっと大きく息を吸い
ふーっと大きく息を吐く
よしっと小さな声で呟いて
画面をポンっと押す
[3.20 23:55]
「もしもし?」
『ん?どした?』
「なんか、声聞きたくなってさ」
『そかw』
「うん」
『………』
「………」
[3.20 23:56]
『最近どう?』
「変わんないよ 少し…んーん、結構勉強つらいけどw」
『学生のうちしか出来ない経験だよw
楽しめって』
「えーw」
[3.20 23:57]
『文句言わないのw 応援してるから、頑張れ』
「…うん、頑張る」
『お前なら大丈夫』
「ん
あー 星綺麗」
[3.20 23:58]
見上げた先には 満天の星空
空を覆い尽くす 今にも消えそうな光
[3.20 23:59]
「ねぇ」
『ん?』
「声聞きたくなったの、半分嘘」
『何それw』
「ほんとはね」
[3.21 0:00]
「この時間 貴方を独占していたかったの」
『えー?w』
「お誕生日、おめでとう」
『おぉー! そういう事か!ありがとう!!』
はしゃぐ声に、思わず微笑む
「何歳?w」
『おにーさんに歳を聞いてはいけません!』
「はーいw」
この時間が愛おしくて
『まったくもー 26になったとか、言えるわけないじゃないのー』
「言ってるしw」
『あ、しまった!w』
この時間が尊くて
「…26歳のお誕生日 おめでとう」
『うん、ありがとう』
離したくなくなる
「ねぇ、ずっと言いたかった事があるんだ」
『なーに?』
(大好きなんだ)
「幸せになれよ」
『うん』
(行かないで)
「早くいい人見つけなよ」
『なかなかねぇーw』
(私の傍に居て)
「職場とか?」
『んー…』
(ねぇ)
「じゃあ」
「私と一緒に就職で京都行く?」
『お? それは?w』
(逆プロポーズ)
(なんて)
(言えるわけない)
「美人さんいっぱい居るかもよ?w」
沢山の星に想いをのせて
広い空へ流してゆく
流しても流してもきりがないけど
私は空へ流し続ける
もう戻らないって分かってるけど
もう戻れないってわかってるけど
それでも
それでも……
「大好きだ ばかぁ…」
