Indemnification Clause の勘所・その1~DefenseとIndemnity | 日々、リーガルプラクティス。

日々、リーガルプラクティス。

企業法務、英文契約、アメリカ法の勉強を
中心として徒然なるままに綴る企業法務ブログです。
週末を中心に、不定期に更新。
現在、上場企業で法務を担当、
米国ロースクール(LL.M.)卒業し
CAL Bar Exam合格を目指しています。


テーマ:
前回の投稿で、「欲しいと思っている書籍や情報がなかなかない」といった話をしましたが、そのつながりで、表題の件について取り上げようと思います。

英文契約をやっていて、「本当にこんなドラフティングでいいのだろうか」「本当にこんな修正提案の立て方でいいんだろうか」と思うことが多い条項のうちの1つが、このindemnification/hold Harmless clauseなのではないでしょうか。しかしなぜか、契約書のドラフティングに関する書籍では、詳細に触れられていることは少ない気がします。そこで、indemnification/hold harmless clauseについて、なかなか日本語の書籍では書かれていない観点でその勘所について改めて考えることにチャレンジしてみたいと思います。(売主/ライセンシーの観点から考察しますが、逆の立場から見たヒントにもなるかと思います。)

ただ考察すべき様々なテーマが存在する領域なので、何回かに分けて考えてみます。初回の今回については、"defense"と"indemnification"/"hold harmless"との違いについて取り上げます。

なお、前提として"indemnification"と"hold harmless"の違いの有無や、その対象範囲も重要なテーマとして存在しますが、どうやらそれぞれのjurisdictionや学者により見解が異なっているようです。この点については別途今度取り上げようかと思います。ただ最近は、どちらの用語もも分かりにくいLegal Jargonとなってしまったがために別の解釈が存在するものの、Plain Englishの観点からは本来Synonymsである、という考え方が主流になってきているようです。これはBryan GarnerのBlack's Law Dictionaryの影響が大きいのかもしれません。最近のアメリカの連邦高等裁判所の判決の中でも、以下のように述べられています。(ただし、イギリスはより英語の解釈に厳格な場合があるので(RepresentationとWarrantyを違う意味として扱う、など)、少し留意が必要かもしれません。(その点はまだ調べられていません))

"An 'indemnity clause,' '[a]lso termed hold-harmless clause [or] save-harmless clause,' is '[a] contractual provision in which one party agrees to answer for any specified or unspecified liability or harm that the other party might incur.' Black's Law Dictionary 784 (9th ed.2009)." (Praetorian Ins. Co. v. Site Inspection, LLC, 604 F.3d 509, 515 (8th Cir. 2010))


では本題に入ります。


defense / indemnificationの義務を生じさせるそれぞれのトリガーは?


早速具体的な条項から問題点を考えてみたいと思います。一例として、買主の立場が強い場合のindemnification Clauseとしては、以下のように始まる条項をよく見るかと思います。

Supplier shall defend, indemnify, and hold Buyer harmless from and against any claims, suits, losses, liabilities, damages, judgments, awards, costs, and expenses (including without limitation reasonable attorney fee), which arise or may arise in connection with . . . .


ところで、このような条項は、どういった場面においてその効力が発動するでしょうか。どのような出来事がindemnificationやdefenseの義務を発生させるトリガーとなるのか、という問題です。この点について、分かりやすい例として、上記例文が第三者の知的財産権の侵害に対するindemnification Clauseであると仮定して考えてみます。

売主の製品や、ライセンサーが付与するライセンス対象権利に第三者の知的財産権の侵害問題が生じる場合、最初にまず、当該第三者から、自社またはその顧客/ライセンシーに対して、「貴社製品はこちらが保有する特許を侵害しています。ライセンス料を支払いなさい。さもないと訴訟提起します」といった警告レターをもらうことから始まるのが通常かと思います。

この場合、自社・ライセンサーと、顧客・ライセンシーはそれぞれどういった対応をするでしょうか。考えてみたのですが、恐らく、以下のような感じではないでしょうか。

自社:弁護士、弁理士に相談しながら、当該主張に対しての反論の余地がどの程度がるか、ということや、ライセンス料を支払った場合の影響と訴訟を受ける場合の影響とを比較しつつ、反論の主張を行うか、和解協議を行うかを検討する。

顧客:弁護士に相談しながら、売主・ライセンサーがどの程度蓋然性の高い反論ができるかを見極めつつも、なるべく自社製品の販売活動が差し止められない形で事を収めたい、と考え、売主・ライセンサーに対して即時の解決を求める。

ところで、この場合、それぞれの弁護士・弁理士への相談費用や、警告をしてきている第三者との協議にかかる費用などは、それぞれどちらが負担するのでしょうか。

この時から、indemnificationやdefenseの義務が発動(Triggered)するかがポイントになってきます。これはあくまで訴訟前の第三者からの警告文に対する対応のため、仮に"defend, indemnify, and hold Buyer harmless against any and all claim . . ." となっていれば、訴訟前のClaimであってもdefenseしたり、後ほどindemnifyしたりする必要があります。なので顧客やライセンシー側で負担した弁護士費用やその他のコストも負担する必要が生じる可能性があります(参考:R. Bradley Maule v. Philadelphia Media Holdings, LLC, et al., No. 08-3357, 2010 U.S. Dist. LEXIS 23635 (E.D. Pa. March 15, 2010))。

しかし、例えば"defend, indemnify, and hold Buyer harmless against any and all action, suit, and proceeding brought against Supplier . . ."となっていて、"claim"といった用語が除外され、明確に訴訟提起以降に限定されていた場合は、結果は異なってきます。訴訟前のdefense義務がなくなるわけです(indemnificationの対象からも外れる可能性が生まれます)。これにより、買主から見れば、売主が訴訟提起前の費用を負担してくれない限り、なるべく早く和解したい、という立場をとるかもしれません。仮に全てを売主に転化できないとしても、です。


DefenseとIndemnification/Hold Harmlessを区別する


こうやって見てみると、indemnification clauseが発動されるタイミングを考えることの重要性が分かりますね。売主やライセンサーの立場からすると、indemnification clauseの内容に関して譲歩するにしても、本当に裁判になって和解した場合や、裁判で特許侵害が認められた場合に、そこでのsettlementやfinal awardのみにindemnificationの範囲を狭めたい、と考えるかと思います。一方、defenseについては、訴訟前から対応してもいいのではないか、という気もします。ですので、Defense、Indemnificationの各々の義務が発生するタイミングを分けるのが正当なのではないでしょうか。そのため、defenseとindemnificationを分けてドラフティングするのが好ましいと思われます。

ところで仮に"defense"という単語なしで、単に"Supplier shall indemnify and hold Buyer harmless . . ."と起案した場合、Supplierにdefenseの義務はあるでしょうか。少なくともアメリカにおいては、その義務は明確にない、とされています。(Uniform Commercial Codeのどこかの条文のnoteにその記載があるのですが、どの条文か忘れました。。。なお、同様の趣旨を述べている判例も多数ある模様です。(例えば、CSX Transp. v. Chicago & N. W. Transp. Co., 62 F.3d 185, 192 (7th Cir. Ill. 1995) "And, in any event, section 8.1 does not impose a duty to defend on CNW as an aspect of the indemnification." )ただし、例えばカリフォルニア州の場合は、California Civil Code§2778(4)において、訴訟提起以降のdefense義務がindemnificationに含まれる旨規定されていますので注意が必要です(訴訟提起前のDefenseは含まれていない)。そのため、準拠法によって異なってくるのでしょうが、起案する場合もカウンター案を作成する場合も、DefenseとIndemnityは別物として、それぞれの義務が発生する場合を明確化することが大事だと言えます。アメリカ法を例として述べていますが、明確に起案する事自体は、準拠法に限らず重要なことかと思います。


こんな感じで、今後何回か、indemnification clauseについて取り上げていき、そして参考とした論文等でオープンソースとなっているものは別途紹介するようにしたいと思います。

。。。長くなってしまいましたが、今日はこのへんで。もうすぐロースクールの期末テストがあるので、次回は同じindemnification clauseについて、軽めな話題を取り上げたいと思います(苦笑)。

Ceongsuさんの読者になろう

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス