理系ゆえに、歴史や社会には疎い筆者です。
そんな私が人生の参考にしてきたのが、SF作品の数々です。
若いころの私は、未来にしか興味が無い時が有り、そんな私が入りこめる世界は、SFくらいしか有りませんでした。
しかし、SF作品の中から、歴史を学ぶことの重要さを教えられたのが田中芳樹著の「銀河英雄伝説」でした。
学生時代の友人から勧められたのが出会いです。
民主思想に疎い日本人
日本でも、大正時代などに民主化運動が盛んな時期は有りました。
しかし、結局日本人は、戦前は天皇中心で門閥の影響が強く残る議会政治、戦後はGHQによって、半ば強制的に与えられた民主主義を享受してきました。
民衆自らの革命によって民主主義を獲得してきた歴史が有る欧米と比べると、残念ながら、民主思想そのものには疎いのが日本人です。
その日本から生まれた「銀河英雄伝説」(以降「銀英伝」)。
著者、田中芳樹氏の、深い歴史とイデオロギー考察、考え抜かれた組織論が生んだ名著です。
ぜひ、これをお読みになって、今一度、民主主義について考えていただきたいと思います。
出来れば原作を読むことをお勧めするのですが、映像化もされています。
ちょうど、再アニメ化シリーズの配信が始まりましたので、そちらもどうぞ!
以下、簡単なご紹介とご提案です。
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銀英伝を読んだことの有るおじさんたちに問いたい、「今の日本をどう思うか?」と「自分はどの登場人物か?」
数多くの魅力的な人物が登場する「銀英伝」。
とりわけ二人の主人公、ラインハルトとヤン・ウェンリーは、読んだものの記憶に深く残ると思います。
その他にも忘れ得ぬ人物たちが登場しますが、若かりし頃この作品を読んだ、そこのあなた。
あなたは現在、この作品の中の誰になっていますか?
ヤン?門閥貴族?それともあの政治家?
腐敗した衆愚政治に対する強烈なアンチテーゼ
ラインハルトは銀河帝国軍、ヤン・ウェンリーは自由惑星同盟軍にそれぞれ所属し、銀河帝国は専制君主制、自由惑星同盟は民主制の国家体制で、互いに争う関係です。
ネタバレになるので、さらっと書きますが、ラインハルトは帝国内で腐敗した貴族を一掃して、公明正大な政治体制を築き上げます。
しかし、専制君主制には変わり有りません。
一方、ヤンが居る自由惑星同盟では衆愚政治が蔓延しており、民衆に選ばれた政治家は、地位と名声を利用して自己を利することしか考えていません。
ラインハルトのような例は、歴史では見たこと有ると思いますが、一方の自由惑星同盟の話は、何かとても現代的で、耳の痛い感じがします。
近代において、銀河帝国とラインハルトのような例は無く(かのナチスも明らかに違いますよね)、この作品に登場するような対比と対決は、誰も現実には見たことは無いと思います。そこがこの作品の秀逸な点で有り、SFでしか無しえない設定でもあります。
このラインハルトの存在と、自由惑星同盟の体たらくこそが、腐敗する民主主義へのアンチテーゼだと私は思います。
それでもヤンは、民主主義を守り抜く
最近とても涙もろく、この中見出しを書いただけでうるっと来てしまいました。
ラインハルトは自由惑星同盟も滅ぼそうとしますが、ヤン・ウェンリーがそれに立ちふさがります。
この時ヤンは、同盟政府の政治家から腐った命令を数々受けますが、毅然とした態度を取りながらも、政府の判断に従います。
この場面を読んだことのある皆さんはきっと、「そんな命令は無視をしろ!」と、登場人物であるシェーンコップと一緒に叫んだことでしょう(心の中で)。
ヤンは、実際の戦闘で国家を守ろうとし、民主主義の悪しきところに苦しめられながらも、民主主義の原則をも守り通します。
まさに民主主義の擁護者です!
今一度考えて欲しい、民主主義とは何か
「銀英伝」の物語はその後も続きますが、そもそも、専制君主制の銀河帝国は、それ以前は現在の人類の末裔が営む民主国家でした。
民衆が最初の君主ルドルフを担ぎ上げ、彼に全権を与え、帝国設立に至るという設定です。
さらに、自由惑星同盟は、専制政治に苦しむ帝国民たちが、リーダーのハイネセンに従って設立します。
これは人類の過去の歴史そのものです。
これ以上は、これから読む方のために語りませんが、皆様に考えていただきたいのは、ヤンが守ろうとしたものは何なのかということです。
前回までのブログで、AIとベーシック・インカムが起こすであろう問題を提起してみました。
ひょっとしたら私の気苦労に過ぎないかも知れません。
しかしそれは既に、同様の問題が現在の日本をむしばんでいると考えます。
私もヤンと同じく、民主主義は尊く、そして唯一の政治体制だと信じています。
しかし、現在、明らかに民主主義が揺らいでいます。日本も、世界も。
民主主義を今一度考え直す必要と、憲法の改正について考える必要が有ると思っています。
「銀英伝」を読み、皆で語ろうでは有りませんか!