『監査の実施』では監査人の実施する監査の具体的な内容について学習する。ここでは以下の6つについて扱う。

1.監査計画
2.リスク・アプローチ
3.内部統制
4.試査
5.監査調書
6.経営者による確認書



・監査計画
監査を実行し、成功させるためには適切な監査の計画の策定が不可欠である。監査人は必ず監査に関する計画の立案を行う必要がある。監査計画の策定目的は多々あるが、一言で言えば監査リスクを合理的に低い水準に抑えるためとなるだろう。
企業が作成する財務諸表の中に重要な虚偽の表示があった場合、これを見逃さぬよう監査のリソースを有効で効率的に配分するために監査計画は立案される。具体的に策定される計画は次のようなもの。
?いつ(監査手続の実施時期)
?誰が(監査を実施する担当者)
?何処で(監査を実施する場所)
?どのような項目について(監査の具体的対象)
?どのような監査を実施するか(監査要点、適用すべき監査手続等)


監査実施論の中でも極めて重要性の高い概念である『合理的な基礎』について。

これまでの学習で、監査要点を立証すべく十分かつ適切な監査証拠を入手することを見た。これらを積み重ねることで、最終段階では適正性命題を立証することになる。監査人は最後に『合理的な基礎』というものを形成する必要がある。

合理的な基礎とは、入手した十分かつ適切な監査用子を総括的に吟味して得た、財務諸表全体に関する自己の意見を形成するに足る基礎をいう。企業の財務諸表の適正性命題を立証できるほどの(あるいは反証できるような)充実した監査証拠を確実に入手したと言い切れるような監査人の心証である。この合理的な基礎をなくして意見表明することはできない。

ひとつ注意したい点として、「十分かつ適切な監査証拠」を総括的に評価して得られるのが「合理的な基礎」ではある。しかし、「十分かつ適切な監査証拠」とは、合理的な基礎を得る為の必要条件であって十分条件ではない。すべての監査要点に対する十分かつ適切な監査証拠を得たこと自体が、そのまま監査人の合理的な基礎の形成となるわけではないということである。
十分かつ適切な監査証拠はあくまでも個々の監査要点に対して個別的に入手するものであり、入手しただけでは財務諸表全体の適正性は判断できない。そこで、十分かつ適切な監査証拠を集約・検討し、それを財務諸表全体の観点から総括的に吟味して、財務諸表の適正性に対する意見を表明する為の根拠である合理的な基礎を得る必要がある。


ということでもう一度まとめ。

合理的な基礎とは、入手した十分かつ適切な監査証拠を総括的に吟味して得た、財務諸表全体に関する自己の意見を形成するに足る基礎をいう。
監査人は監査要点を立証すべく、証拠資料に監査技術を適用して監査証拠を得る。この一連の手続は監査手続と呼ばれる。証拠資料に対するアプローチ(=監査技術の適用)は、以下のような手法が見られる。


1.記録や文書の閲覧
企業にある会計帳簿などを監査人が自ら確かめるもの。

2.有形資産の実査
経営者の計上した有形資産の現物を監査人が実際に確かめる手続。

3.観察
業務処理のプロセスや手続を確かめること。

4.質問
監査人が経営者や従業員、あるいは社外の関係者に問い合わせて回答を求める監査手続。

5.確認
確認するのは主に預金残高など。取引銀行や近辺の銀行に対して残高を確認する。

6.再計算
企業内の会計記録等の計算の正確性を監査人自らが計算して確かめる手法。

7.再実施
企業の内部統制や、それに基づく業務プロセスの有効性を監査人が自ら実施して確かめること。

8.分析的手続
財務データ相互間の、または財務データとそれ以外のデータとの関数の推定値を算出して、企業の記録と監査人による推定値に異常な乖離がないかを比較によって検討する監査手続。