今日の祖母は珍しくアクティブでした。

午前に近所のドラッグストアに私と一緒に買い物に行き
午後は床屋さんへ顔そりに行った。

『床屋さんは30年ぶり』
といっていたが昨年も行っていたはず…。
私は『へー』と適当な相槌を打っていた。

顔そり行くということは
来週が病院だということを理解しているのだろうか。
そうだといいのだけれど。

床屋まではゆっくり歩いて20分ほど。
祖母と手をつなぎながら歩いていた。
しかし、だんだんと祖母の歩く速度が速くなっていく。
たびたび止めて落ち着かせるのだが、なかなか直らない。

まばたき少なめで上目づかい。
さらには前のめりになっていた。

そして角を曲がるときに勢い余って転んでしまった。
しりもちをつきながら倒れ込んだ。
怪我は無いようだがなかなか立てない。

二人で苦労していると、見かねた中年女性が手をさしのべてくれた。
祖母は知り合いのように会話をしていたので
知り合いかと思ったら違うみたいだ。

『ありがとうございます。祖母は認知症気味で…』
と私がいったら
『いいの。そういうことは言わなくていいのよ』と優しく言われた。
諭されたと言ったほうが正しいのかもしれない。
頭をガツンと殴られたような衝撃だった。
自分をとても恥ずかしく思った。

その後その女性は私と一緒に祖母を左右から支えるようにして
床屋さんまで付き添ってくれた。
何度もお礼を言った。

床屋さんで待っている間
私はさっきの出来事を思い返して少しへこんでいた。
見ず知らずの人に、まだきちんと診断していない状態の祖母を
認知症気味だと言った。
祖母の為ではなく『頑張っている自分』をアピールするかのように…。
だんだん自分が嫌になってきた。

顔そりが終わり、祖母は上機嫌だった。
肌がツルツルになったと何度もいっていた。
また手をつなぎながらゆっくり歩いて帰った。

私は祖母が転んだ衝撃と自分の醜態のせいで
心に穴があいたような感覚を引きずっていた。

これからはもう少し寛容に、柔軟になろうと思った。