江戸川大学社会学部ライフデザイン学科2年 山本 祥弘
近頃『地方』という言葉をよく耳にする。2007年1月、宮崎県知事に東国原英夫氏(元タレント:そのまんま東)が就任して以降、テレビ等で宮崎県が頻繁に取り上げられるようになった。国民のほとんどが『地方』を意識させられたのではないか。また同氏は「地方が元気にならなければ国は元気にならない」と提言し地方自治の重要性を訴えていた。
とは言え多くの『地方』の現実は人口の減少、医師不足、農・商業等の後継者不足など問題が山積みである。今回のローカルデザイン研究会はそんな『地方』が注目される現在、『地方小都市(駒ヶ根市)を元気にする』ために活動を続ける価値総合研究所 塩谷未知氏と長野県駒ケ根市商工観光課 小原昌美氏のお二人を迎えてお話を伺った。南アルプスと中央アルプスに囲まれた駒ヶ根市は人口35万人弱、養命酒やソースカツ丼が有名な地方小都市である。1993年には全都市住みよさランキング1位(2008年は11位)に選ばれるなど、その他様々な指標調査で上位にランクされている。
前述からも分かる通り、現在住みよい都市とされている駒ヶ根市も、円高などの理由から1996年に長野県中小企業総合指導所と地元企業経営者でまとめられた報告書では「このままでは駒ヶ根市は廃れていく」「未来はない」とされ厳しい状況にあった。そこで駒ケ根市役所は個々の企業の限界を超えるため企業がcollaborateし能力を高める場としてテクノネット駒ヶ根を立ち上げた。市役所(行政)はあくまで応援・支援する立場をとっているテクノネット駒ヶ根のコンセプトは、元気のある会社や商店をさらに活性化することで他の企業牽引し地域全体を盛り上げていくこと、地域の企業能力を活用し『共育』による地域人材の育成による地域力の強化、会員制ではなく企業経営者11人の幹事会から提案される研究会などに自由参加などである。どの研究会も基礎的な学習・実習を繰り返し続けることに重点を置き活動しているそうだ。
それらの研究会の中で最も駒ヶ根が力を入れているのが企業ドメイン研究会である。ドメインとは企業が行う事業活動の展開領域、企業における本業を言い表した一言の言葉だ。一般的にドメインを定めることで、企業の経営資源を投入する対象が決定されたり、意思決定者の注意の焦点が限定されるなどの効果があると言われている。塩谷氏は企業ドメインを持つことで企画力・提案力が身につき企業として成功できるという。しかし類似した業種でも異なったドメインを定めなくてはいけないため簡単に決めることはできない。そこでドメイン設定において重要になってくるのは、その会社の強みと弱みを理解すること、会社のhistory分析、何をやりたいか・何ができるのか、など企業ビジョンの策定のプロセスを踏まえることである。また独自のドメインは時間の経過とともに成長していくという。
また小原氏によるとこれらの駒ヶ根市の活動(テクノネットの研究会)は、現在新たな企業の誘致のafter followになっているらしく、企業側に受けがいいようだ。また倒産が過去5年ないことや税収のUPなどからも駒ヶ根市が元気になってきていると話していた。
グローバル化が進み均一化する日本において、ドメインを定めることは地方都市の活性化のカギになると感じた。各々の地方に合った企業ドメインを見出す事は、均一化によって見失いかけていたその地方の伝統・文化・風土を再発見するきっかけになるに違いない。また、ドメインの設定プロセスを経て社員一人一人が自社と他社の違いを明確にできたとき、自信に溢れ『元気な企業』として、さらに地域を盛り上げていくことができるだろう。
東京やその他首都圏を日本の『中央』とするならば、日本の約8割は『地方』と言う事になる。もしこのまま『地方』の疲弊が深刻化すると、食糧面だけで判断しても食糧自給率が数パーセントほどの中央都市 東京、延いては日本の未来はないと言えるのではないか。冒頭で挙げた宮崎県知事東国原氏の「地方が元気にならなければ国は元気にならない」という言葉は先述の食糧問題の例と同じで『中央』だけでは日本は成り立たないということを表している。現在、衰退期もしくは立て直そうとしている地方小都市は、数年で異動が起こる行政主体の街おこしではなく、駒ヶ根市の様な企業など民間が協力し合い継続可能な地域経営を考えていくべきだ。そしてその様な取り組みが中央都市と支え、中央都市とは異なった均一化されていない地方都市にしていくことのできる手段であると感じた。