今回のゲストスピーカーは長野県駒ヶ根市役所の小原さんと価値総合研究所の塩谷さんにお越しいただいた。

 長野県駒ヶ根市は長野県南部、伊那谷の中央部にあり東に南アルプス、西に中央アルプスがある。1975年に中央自動車道開通により、首都圏及び中京圏と結ばれ、企業誘致により企業進出が盛んになった。街の名物はソースカツ丼で38店舗のソースカツ丼会加盟店がある。人口は3万5千人弱、1993年には東洋経済新報社が行った「全都市住みよさランキング」で1位になった実績がある。

 1996年に長野県中小企業総合指導所(現・財団法人長野県中小企業振興センター)と地元企業経営者でまとめた「駒ヶ根市機械金属工業産地診断報告書」によるとグローバル化が進む中、アジアとの競合をしている大手企業を頼りにしていては駒ヶ根市の中小企業には明るい未来は見えないという現実を報告書によって示された。

 そこで、個々の企業の問題を解決するために地域企業の横の連携を強化し、人材育成などを支援する「テクノネット駒ヶ根」という組織が誕生した。地域の中小企業が主体となり、小原さんなどの駒ヶ根市や商工会議所の方が事務局として支援している。参加企業は約70社くらいである。事業資金は駒ヶ根市などの公的機関の補助金と参加者の負担で行っている。組織の中では企業経営者11人の幹事会が主導となり、企業強化のための7つの事業を行っている。

 その中の主力事業が「企業ドメイン確立事業」である。この事業では価値総合研究所の塩谷さんが1997年から講師として「企業ドメイン研究会」を行ってきた。「ドメイン」とは企業が行う事業領域(存在領域)である。「ドメイン」をわかりやすく伝えることで経営判断を行いやすくし、従業員も共通の意識で仕事に取り組むことができる。例えば、ホテルの「ドメイン」を“自慢の温泉がある宿”にすると経営判断は温泉を中心に考えればよい。従業員も自慢の温泉を管理運営することが共通意識になる。

また、「ドメイン」をあいまいにすることで事業領域を拡大することができる。ホテルの例であると「ドメイン」を“「ほっとする温かさ」の宿”にすることで、広い意味での事業展開が行える経営判断が必要である。従業員も「ほっとする温かさ」とは何かを考え、より良いおもてなしが共通の意識になる。

「ドメイン」はそれぞれの企業理念や事業ビジョンに合う設定をしなければいけない。

そのために企業自身の自己分析が必要になる。現在の状況を認識し、“わかりやすさ”と“あいまいさ”で事業領域を定義することで企業の強化となり、人材育成にも繋がるのである。

私は「ドメイン」というものを伺い、就職活動のことを思い出した。企業を選ぶときに企業理念を見ると「お客様に満足を提供する会社」など、あいまいなものが多く、わかりにくい。事業内容を見ても具体的で専門的なものばかりでわかりにくい部分もある。

「企業ドメイン」は企業がちょうど良いわかりやすさで認識できると思った。この「ちょうど良いわかりやすさ」が企業全体の共通意識として最適なものだと感じた。

 また、地域の若い人は中小企業が何をしている企業なのかわからないことが多いため、印象だけで判断し、地元の企業から離れるかも知れない。しかし、「企業ドメイン」があることで興味を持たせ、地域の人材確保にも繋がるのではないかと感じた。


江戸川大学社会学部4年 田原 幸訓