僕のフィリピン  ~その後のフィリピン・ラウンドトリップノート~ -373ページ目

アジアのお札はふにゃふにゃだ

ガバッと跳ね起きた。

大きな窓からは朝のマニラの風景が広がっている。

 

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昨夜はラウンジでワインを飲みながら日記の1ページ目を書き、その後フカフカのソファーに身を沈めて

しばらくの間、長かった出発までのいきさつを思い返していた。

正直なところ、僕の心の中には期待とともに不安が常につきまとっていた。

こんな事をしていていいのだろうかと。

 

不安とは心理学的にいうと、危機や危険が迫っているという認識と、それに対処できないのではないかという思いによって生じるものらしい。

仕事を辞めて旅に出る。自分で望んだ事だ。

僕はこれでよかったんだ、となかば強引に自分自身を納得させて部屋に戻り、ミネラルウォーターをガブ飲みして横になった。ぐっすりと眠った。

 

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ベッドから起き上がると洗顔のついでに頭まで洗い (出発前に僕は頭を丸めた) すぐに身支度を済ませ、朝食を食べにロビーまで降り、「きくふじ」ではない方のレストランに入ってまずはコーヒーをすすった。

不思議な事に昨夜の不安は消えていた。

 

ピックアップの時間だ。

チェックアウトをしてローズさんと共に国内空港に移動する。

マニラの通りはもの凄い混雑ぶりで、排気ガスと砂埃で行きかう人々もハンカチやタオルで口元を押さえている。

 

 

ところで僕達の持っている、 成田~タイペイ~マニラ の2ヶ月のオープンチケットは電子チケットというやつで、いってみればコピー用紙に印字してあるだけの紙っぺら1枚だけだ。

紙なのに何をもって電子というのかは謎だ。

その紙っぺらに仮の帰国便が記載されていて、僕達はその予約を一旦キャンセルして自分達の予定に合わせてまたブッキングしなければならない。

何かの事情でうまくいかなかった時の事を考えて、空港に向かう途中に電子チケットとパスポートのコピーをとり、ローズさんに渡した。

どうでもいいことだが、フィリピンではコピーの事をゼロックスというみたいだ。

 

 

ニノイ・アキノ国際空港に比べて、国内線のターミナルはひどくちっぽけだ。

「グッドラック」とローズさんに見送られて、出発ロビーに向かう。

 

飛行機が少し遅れるらしく、僕は空港の職員とアメ玉をしゃぶりながら雑談して時間を潰した。

みんな陽気で明るい。

ついでといっては何だが、いくらかのお金を両替してみた。

僕の渡した円は、財布が曲がらないほどのペソ紙幣となって返ってきた。

いつも思うことだが、東南アジアのお札はもうこれ以上は無理、というぐらいふにゃふにゃだ。

てろんてろん。

しげしげと眺めて、新札の発行はいったいいつ以来ないのだろうかとか考えた。

当然その答えは判らずじまいで、自分の無用心さに気づき、あわてて札束をしまった。

ふにゃふにゃの紙幣の束はとりあえずワシ掴みしやすいという事がわかった。

 

             

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電光掲示板、ではなくカティクランとかかれたプラスチック製の板が搭乗口に吊るされた。

僕達は太陽の照り返す滑走路をトコトコと歩き、タラップを上る。

20人乗りぐらいのエイシャンスピリットの機内はほぼ満席だ。

カティクランまではおよそ1時間。

 

ものすごい音でプロペラが回りだし副操縦士が救命胴衣などの説明をはじめた。

天井からはまるでドライアイスを水の中に入れた時のような冷気が噴出してきた。エアコンだ。

説明の途中であるにもかかわらず、アメリカ人のグループが 

“おいおい、大丈夫かよ”

といった感じで騒ぎ出した。

 

副操縦士は説明の最後に

 

       「この飛行機はアメリカ製です、快適な空の旅をお楽しみ下さい。」

 

                                    と付け加えた。

 

 

乗客の顔がほころび、飛行機はユルユルと動き出した。