なぜハゲ頭なのだろうか
僕達を乗せた小型の飛行機は、ぐんぐん高度を上げていった。
身体にかかるGが心地よい。
コックピットが丸見えのこの飛行機。パンフレットもユニークだ。
まったく意図的ではないのだろうけれども。
どういう事かというと、文字とイラストで緊急時の対処方などを説明してあるのだが、そのイラストの男性の頭が全部ハゲているのだ。
こんな風だ。
機内でタバコをふかしているハゲ頭の男性
シートベルトを締めてニコニコしているハゲ頭の男性
緊急着水時に前に倣えのような姿勢で滑り台から降りるハゲ頭の男性
ありとあらゆるシーンでの乗客の頭がハゲているのだ。
どうしてハゲ頭の男性ばかりを描いてしまったのだろう。
まあ、人はべつにハゲていたって構わないのだから、乗客を表すために描かれたイラスト全てがハゲだったとしても文句をいえたスジではないし、それこそ逆差別ということに他ならない。
僕はそのイラストの絶妙なタッチにやられてしまい、隣の席のカミさんとクスクスと笑いあった。
・ ・ ・
およそ1時間という短いフライトでは、飛んだと思うとあっという間に着陸の態勢に入る。
僕達の向かうカティクランはパナイ島の北西に位置し、目指すボラカイ島はそこから船で30分程だ。
2年前に新婚旅行で訪れた時の事を思い出しながら着陸を待った。
ワクワクする。
そうこうしている内に、窓からボラカイの姿が確認できるくらいになり飛行機は大きく旋回して一気に高度を下げていった。
機上から見下ろしていたヤシの木が、もの凄いスピードで自分の目線と同じ高さになっていく。
バゥン バゥゥ~ン
無事着陸した飛行機は滑走路の先端ギリギリで止まり、くるっと向きを変えてターミナルの方へのろのろと進んだ。
プスプスプス・・・・・プスン
プロペラが止まり機体が完全に停止した。
僕達も含め、乗客みんなの顔つきはとても明るい。
楽しさを抑えられない表情というのは、きっとこの顔だ。
わずか3段ほどのタラップを降り、僕は “南” に来た事を実感した。
むきだしの太陽。肌が痛い。
ターミナルといっても田舎の宅急便の集配所みたいな建物で、小奇麗な小屋といった趣だ。
僕は履いていたティンバーランドのローカットのブーツを脱いでビーチサンダルに履き替え、既にサンダル姿のカミさんはサングラスを色の濃い方にかけ替えていた。
僕達がビーチサンダルに履き替えたのにはワケがある。

