児相に併設されている一時保護所での実習が始まった。
具体的に何をするかは決まっておらず、食事と終了時刻だけ伝えられた。
臨機応変に、ということだろうか。
担当職員は全身から忙しさが溢れていて、私たちへの指示もなかなか出せない状況だった。
『お待たせしてしまってすみません』
他の職員から小声で声かけがあったが、特に指示もなく、しばらく様子を見ていた。
子どもたちは外に出ることができないので、学校には行かない、行けない。
小学生以上の子どもたちが学習の時間は、幼児たちと遊ぶことになった。
ボール遊びをして、一瞬に走り回ったり。
その後は、おもちゃで遊んだり、折り紙をしたり。
抱っこ禁止。
でも抱っこしてほしそうに、くっついてくる。
困った。
座っている私の足の上に、ちょこんと座ってきた。
かわいい。
昼食は子どもたちとみんなで食べた。
お世辞にも、おいしいとは言えない。
黙食。
近くの席の子に話しかけるか迷ったが、やめた。
子どもたちが完食しているのを見て、私も慌てて水で流し込んだ。
午後からは、小学生の男子、小学生の女子、中高生の男子、中高生の女子、それぞれと活動することができた。
スポーツをしたり、だるまさんが転んだをしたり、お絵かきをしたり、たくさんの子どもたちと触れ合うことができた。
あっという間に終了の時間がきた。
レポートを作成した。
最後に、職員との振り返りがあった。
感じたことを率直に伝えた。
体は疲れていたが、とても貴重な経験ができたので、来てよかったと思えた。
実習前は、保護されている子どもたちに、うまく接することができるのか、とても不安だった。
しかし、子どもたちは、想像を遥かに超えるほど大人だった。
非行に走った子が、どの子なのかもわからなかった。
素直で明るい。
笑顔を絶やさない。
わがままを言わない。
気遣いもできる。
辛い思いをしていることを感じさせない。
それが、保護された子どもたちの特性だと職員から聞いた。
悲しかった。
自分が子どもの頃は、もっとわがままで、もっと自由に好き勝手していた。
子どもって、こんなに遠慮したり、気遣いをしたりするんだ。
ショックだった。
帰り道、ようやく夫婦で話ができた。
しっぽ『子どもたち、みんなかわいかったね。
でも、みんな大人の顔色を見てて、辛かったね。
大人に嫌われると居場所がなくなると思ってるのかな』
まさお『そうだね。
ああいう子どもが、1人でも減るといいね。
養子は乳児がいいと思っていたけど、実習してみて、もう少し大きくても受け入れたいと思った』
1日中、別々に行動していたので、話は尽きなかった。
事務所が汚いこと。
職員の子どもへの当たりが強いと感じたこと。
一時的な居場所かもしれないが、子どもたちの不自由さや不便さが多いこと。
先が見えなくて不安そうだったこと。
職員は忙しくて大変なことは、なんとなく理解できた。
たった1日、ふらっと行ったくらいで、本当の苦労は到底わからないだろう。
だが、今の仕組みでは、職員にとっても、子どもたちにとっても、限界に近付いているのではないかと感じた。
ニコニコして、かわいい子どもたち。
それが、とても辛かった。
何かできることはないか。
考えさせられる1日だった。