『医療事故に「遭わない」「負けない」「諦めない」』読了しました。

著者の石黒麻利子弁護士は、医学博士でもあり、弁護士として医療事件を専門に扱っておられます。

著者は、お義父さまが医療事故に遭い、医療事故は患者本人だけではなく家族にとっても大変つらく、生活を崩壊されることを経験し、医師としての知識を被害者救済に生かしたいとの思いから、医療専門弁護士になられたそうです。(本著「はじめに」より)





皆さまは、医療事故と医療ミスの違いをご存知でしょうか。
実は私も曖昧でした。
まずは医療事故と医療ミスの違いを知ってください。

(以下、青太字は本著より抜粋部分です)

医療事故は「過失がある場合」と「過失がない場合」の両方を含み(中略)医療過誤は「過失がある場合」のみを意味し、「医療事故=医療過誤」ではありません。

医療過誤という言葉は医療関係者が使う言葉ですので、(中略)、医療ミスと表記します。


と、あります。
「何事も、語る前に、まずは言葉の意味を正しく理解することからがスタートだ」と感じます。
本著は、この冒頭から勉強になりました。

言葉の意味を正しく理解することで、もし自身が医療ミスで苦しんでいた場合にも
「医療事故は、患者側にも責任がある」
と誰かに責められたとしても、医療事故と医療ミスは別物だと区別がつけば、何を言われようといらぬ所で傷つく必要もなくなります。




ところで、

医療事故は一つの施設で月に1回起きている
のだそうです。
それだけでも驚きますが、


第一章 医療専門弁護士が見た医療ミスの現場

の中では、実際に起こっている「医療ミス」の7つのケースが取り上げられています。


この内容を読むと、本当にあってはならない医療ミスの連続で、読んでいて沸々と怒りが湧き上がってきたのですが、

これらは決して珍しくはなく、驚かれるかもしれませんが、「よくある」ケースと言えます。

という本著の言葉に驚きと、怒りを通り越した失望感のような感情が湧いてきたのでした。。

このようなミスは、どれほど患者が注意していようと避けられない事象だと感じます。。

何度でもいいます。
医療ミスは、患者には防ぎようがありません


前出のように、月に1回は起きているといわれる医療事故は、身近に起こるし、決して他人事ではなく、患者側も気をつければ防げたであろう医療事故もあると思います。

しかし、

手術は医療者のみの密室で行われます。

また、医師が必要かつ重要な診療情報を提供しないことには、患者はその中身はおろか、存在すらを知る由もありません。

カルテは、患者側にとって重要資料になるのですが、医療者側の手元にあることで、隠蔽や書き換えが行われる可能性もあります。
(本著には、カルテの自己開示請求と証拠保全の手続きとその違いも書かれています)


医療ミスで闘う患者やその家族は、とても弱い立場です。実際、医療裁判で患者側の勝訴率は2割以下と言われています。

だからといって、
医療者でもない素人の第三者が、、

その医療行為の全てを把握しているわけでもない第三者が、

安易に、

医療事故と医療ミスの意味を区別も理解せず、
知ったか振りで、
患者側にも責任があるなどと語ることは、

本当の医療ミスに苦しんでいる患者や家族を傷つけることになる、と強く感じます。





話を、続けます。。


第ニ章 医療事故は「患者力」で防げる

ここでは、医療事故からどうやって身を守るか、
いい病院の選び方や危ない医師の見分け方など、医療に罹る前に知っておくといい内容が書かれています。
ぜひ、目を通されることをお勧めします。




以下、第三章〜第八章まで、
医療紛争について準備や実践等が具体的に分かりやすく書かれています。


患者側の立場にたって弁護をしてくださる石黒麻利子弁護士のようなかたがおられることは、患者にとっては救いだと思います。


医療ミスを疑っても、裁判になると勝ち目がないと初めから諦めている患者たちは大勢います。

明らかな医療ミスであっても、ミスと認めない医療者側が多いなかでの闘いになるからです。



医療ミスに遭った患者は、何も損害賠償金がほしいわけではありません。

幾らお金を積まれても医療ミスで亡くなった患者の命は戻ってきませんから。。

それでも闘おうとするのは、
医師が自らのミスを認め、患者や患者の家族に謝罪し、誠意を持った対応をしてくれることを望んでいるからです。。

また、患者側が泣き寝入りしないで闘うことは、
医療ミスに遭った患者自身のその命と引き換えに、医師とその医師が属する病院の医療過誤体質の改善を促すことができると感じます。



まさに、本著のあとがきに著者はこう書かれていました。


(本著「おわりに」より)

  多くの病院は医療ミスが起きたとき、被害患者や遺族に対し適正な補償をし、示談します。しかし、ごくわずかですが、ミスが明らかでも一切補償をせず、患者や遺族を泣き寝入りさせる病院もあります。そのような病院は医療法律相談で「またですか?」と言いたくなるほど何度も医療ミスの相談を受けます。
  (以下、略) 
  




本書が悩める患者やご家族にとって、一条の光となりますように。。














2016 膵癌ガイドライン



「神よ、願わくばわたくしに

変えることのできない物事を

受け入れる落ち着きと

変えることのできる物事を

変える勇気と

その違いを常に見分ける知恵とを

さずけたまえ」

by ニーバの祈り


今に生きる❣️
Even if I knew that tomorrow the world would go to pieces, I would still plant my apple tree.