ボッティチェリから見えるルネサンス美術の技法について 遠近法   | lat-sasakikaoruのブログ

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アートの勉強のため、現在フィレンツェに住んでいます。
イタリア語の語学勉強も始めたばかりですが、イタリアでの生活やアートに関連することをアップしていきます。
日本に帰ってからのアート活動に生かして行きたいと思います。

みなさんもルネサンス期に

 

様々な技法が取り入れられたことをご存知だと思います

 

 

ほの一つに“遠近法”

 

よく聞くのがダ・ヴィンチの“最後の晩餐”の構図では

 

遠近法の消失点(中心)はイエス・キリストの顔になっていること

 

その点は小さな穴があいていることなど

 

そのために、視線は自然とイエスの顔に収束すると

 

 

 

私もこの事柄は

 

歴史における文化として、技法として学んでいました

 

 

ボティチェッリの「春」などは

 

背景の表現にややゴシック時代の名残がありました

 

 

しかし、遠近法の技法

 

正確には線遠近の技法は私が考える以上に

 

早くから厳密にとりいれられていました

 

先日取り上げた

 

フラアンジェリコの受胎告知の建築物の空間について

 

3次元を積極的(熱狂的と言えるほど)に描いています

 

 

ボッティチェリの作品では

 

ここまでやるんだ~

 

と私は、心の中でつぶやいたくらいです

 

例えば

 

「誹謗」1495年 ボッティチェリ テンペラ 板

 

背景のポルティコ?の柱の及び天蓋の部分にかけて

 

しっかりと書き込まれています

光を反射してみると

 

わかりますね!

 

支持体の板にかなり強い力でザクザクと刻み込まれた線が

 

ビュランかナイフのような鋭いもので刻まれています

 

そして、その背景の上から

 

テンペラで人物を描いています

 

また、こちらの

「書斎の聖アウグスティヌス」1490-95 テンペラ画 板

 

この作品も光を当てると見えてきますね

背景を正確に描いた上でカーテンを描き込んでいます

 

人物の描写も細かく丁寧になされています

 

 

 

 

さらに、この作品全体を見てみると

 

この作品は構図も不思議です

 

 

遠近法の消失点の位置はおへそあたり

 

机の板の裏側が微妙に見える高さ

 

なぜこのような構図をとったのか・・・・

 

足元には

 

何度も書いては破り捨てた紙と羽ペンの残骸

 

このことは、アウグスティヌスの思慮深さや実直さを表しています

 

 

この絵を設置する祭壇の高さの関係なのでしょうか

 

 

とは言え、私たちの視線は

 

半円の天蓋で覆われた中心である顔に注目します

 

 

もっと突っ込むなら、この聖人はこの机の奥に

 

どうやってい入ったのだろう?

 

と、この狭い空間の構造をいぶかしくおもいますが・・・・

 

 

こうした閉じられた空間も、彼の精神性の表現とらえることができます

 

 

技法から少し離れましたが・・・

 

 

 

同じ題名の昔の作品では・・・

 

「書斎のアウグスティヌス」1480年頃 フレスコ画

 

用いた画材や主題そのものが違うので

 

構図や空間の処理が変わってきますので


 

遠近法の使い方も

 

3次元の空間を再現する意図が強くはありません

 

 ※主題は、アウグスティヌスが苦悩して書物も記している時

  突如、天啓を受けた、その瞬間です

 

 

 

まとめてみると

 

 空間(三次元)を再現するための線遠近法が

 

 徹底して厳密に使われていたという

 

 

 

 現代では当たり前の技法でも

 

 当時は画期的!

 

 これをやらなきゃ、遅れていると言わんばかりに・・・

 

 しかし、これも近代で終わりの概念です

 

 時代の変化は止まらない

 

 

 

 

こうして、作品のマチエールを丹念に見ながら

 

考察を深めていくと

 

ボッティチェリの技法や表現を通して

 

いろんなものが見えてきますね

 

 

では、今日も最後まで読んでくれてありがとうございました。