シネマの覚醒!!

シネマの覚醒!!

私に映画を撮らせて下さい。

奇特な協力者(パトロン、業界人、etc.)を求めています。

一編の戯曲を載せており「アメブロ ラクイヲ」で検索し

スマホで読まれることを推奨(読み易い)。


テーマ:
●高層ビル 屋上 夜明け
二人の若い男女。
柵を背に腰を下ろしている。
男、煙草を取り出し吸い始める。
女、男の手から煙草を奪いマネして吸ってみる。がムセる。
 
「ね。煙草始めたキッカケってなんだったの?」
「煙草か。そうだな。やり始めたのは中二くらいだったかな。まぁイキりたかったんだよ。反骨心──みたいなもんもあったかな」
「何に対する?」
「規則よ」
「青いね」
「まぁな(女から煙草を奪い取る)でもまぁ人間の性みたいなもんよ。禁止されたら破りたくなる。ルールは破る為にあるんだよ、知ってっか?」
「アレみたいなもんだね“禁断の果実”」
「エデンの園か?」
「そう」
「アレは神の作為よ。アダムとイヴに知恵の実を喰わせる為に二人に喰ってはならんと敢えて神が禁止した。禁止されたから蛇の誘惑に負けた。ほんで楽園から追放された」
「なんの為にそんな事」
「光を知る為の壮大なプロジェクトだよ。闇に堕ち、闇を知る事で初めて光を知る」
 
男、煙草を地面に擦りつけて消す。
 
「どうする。ホントに来るか?」
「(頷く)」
 
男、柵を跨いで外側のビルの縁へ。
女も男の手を借り危なっかしく柵の外へ。
二人、遥か遠方の地上を覗き込む。
 
「最後にある古い寓話を暗記してあるから聞かせてやる。目を閉じて俺の話に意識を傾けろ」
「OK(目を瞑る)」
「──海の近くの海岸で大きな祭りがあった。何千もの人々が集まり、そこで人々は突然ある質問にとらわれた。それは海の大きさは測る事ができるかできないか。海に底はあるかないか。水深は測れるかどうか」
「──」
「偶然に全身が塩でできている男がそこに居た。彼は言う「皆はここで待って話し合いをしていてくれ。私が海に入って確かめて来よう」そう言って塩の男は海に飛び込んだ。何時間か経ち、幾日か経ち、そして何か月か経った。とうとう人々は家に帰り始めた。人々は随分長い間待ったが塩の男は帰って来なかった。塩の男は海に入った途端に少しづつ溶け始め海の底に着く頃には完全にいなくなってしまった」
「──」
「彼は知った。だが帰ることはできなかった」
「(ゆっくり目を開ける)」
「心の準備は」
「いいよ」
「よし」
 
女、男の手を握る。
二人息を合わせ、屋上から足を踏み出す。
 
●メイン・タイトル
『めでたしマリア』
 
●マリア宅 朝
パジャマ姿のマリア。
ベッドの上で上半身を起こし、隣りに立つ制服姿のもう一人の自分を茫然と眺めている。
 
マリア「(声)朝起きたら私が居た。私は一人っ子だ。暫くの間色々と思いを巡らせた結果こう結論付けた。私は気が狂った。頭がおかしくなった。キ○○イになったのだと」
 
●マリア宅 リビング 朝
テーブルに就く父と母。そして制服姿のマリア。
朝食を摂る一家。
マリアの後ろに立つ制服姿のもう一人のマリア。
 
マリア「(声)この事態を両親に話せばおそらく私は精神病院に連れて行かれるだろう。思春期に発動する精神の一時的錯乱。しかしここまで臨場感のあるものかと心は千々に乱れる」
 
●住宅街 朝
カバンを片手に歩くマリア。
その後ろに続いて歩くもう一人のマリアはカバンを持っていない。
 
マリア「(声)みんなはドン・キホーテを嘲笑するが相対的に言って人間なんて所詮みんな等しくドン・キホーテではないか。と、私は考えていた。確かパスカルが人間は皆狂人であり、私は狂ってないと思っている人間がいればその人は私は狂っていないという仕方でやはり狂っている、というような事を言っていたと思う」
 
●電車 車内 朝
吊り革に掴み立つマリアと対峙するように座っているマリア。
 
マリア「(声)雑に言って大多数によって共有化された狂気がみんなの言う現実で、少数の共有化されていない狂気が非現実だという事なんだろうけど、もう一人の自分の出現で今後、私生活にどのような障害が待ち受けているのか。そこに物理的負荷や、みんなと同じような人生を歩もうとする私の中にある固定観念をキチンと再構成できるか否かで──」
 
走っていた電車が停車。
吊り革に掴まっていたマリア、おもむろに開いた扉に向かいホームに下車。
それを車内で座って観ているマリア。
扉閉まり走行を始める電車。
 
マリア「(声)もう一人の私が降りた」
 
●駅 ホーム
走り去っていく電車をホームで一人見送るマリア。
 
マリア「問題が発生。さっきまで私と思っていた方の私が電車に乗って去って行き、別の私と思っていた私がホームに降りている」
 
無人のホームに佇むマリア。
 
マリア「(声)これはマズい。非常にマズい事態になった。完全に理性を超えた。私は完全な狂人になった」
 
そこへ一人の老女がマリアへ近づく。
 
老女「あんた美人さんだね。さっきの美人さんとは双子かい?」
マリア「え?お婆さん、私は私ですか?イヤ、私と同じ車両に乗ってたんですか?」
老女「ほうだよ」
マリア「(声)問題がこじれ始めた」
老女「娘さん。あんたのお名前はね?」
マリア「私はマリアと言います」
老女「マリア。可愛い名前だね。その制服、波多野学園の子だね。駅はまだ先なのにどうしてこんな何もない住宅街に降りたね」
マリア「いや──まぁサボろうと思いまして」
老女「青春だね」
マリア「狂譟です」
老女「これからどうするね」
マリア「困ってます」
老女「よかったら私と一緒にサーカス観に行くね」
マリア「──」
 
●住宅街 日中
老女とマリア。閑静な住宅地を歩く。
 
マリア「(声)サーカスとは一体何か。ここはどう見ても住宅街。テントを張れる場所などあるのか。そもそもこの老女は何者なのか。もしや歳のせいで頭がどうにかなっている人ではないのか。イヤイヤ今は私の方がどうかなってる身か」
老女「着いたね」
 
コンクリートの打ちっぱなしの立派な建物が出現。
 
マリア「ここは?」
老女「ついて来るといいね」
 
建物の隅に地下へと降りる屋外階段。
そこを降りて行く老女。戸惑いながら老女に続くマリア。
最深部の扉の前まで来ると老女インターホンを押す。
すると男性の声。
 
男性「(声)秩序とは無数の無秩序の調和のとれた埋め合わせによって安定する」
老女「よしとくれ。私ゃ哲学には興味ないね」
 
扉が開かれる。
老女、中へ。それに続くマリア。
 
●五色堂 屋内
中へ入ると中世ヨーロッパのゴシックな回廊が出現。
赤い絨毯が伸びている。
執事のような正装した案内人の男性が老女とマリアを導く。
 
老女「(案内人に)今日の出し物はなんだい」
案内人「“綱渡り”です」
老女「綱渡り?ヒツジは用意されてるね?」
案内人「色んなイキモノを体中にパンパンに詰めた極上のヒツジを御用意していたのですが逃亡致しまして、只今勢威捜索中です
老女「不手際だね」
案内人「御安心下さい。トラブルもショーの隠し味ですので」
 
受付ま前に着く老女とマリア。
 
受付嬢「お二人様ですか」
老女「ちょっと待っとくれよ」
 
老女、カバンの中から財布を取り出し受付嬢にチケットを二枚渡す。
 
受付嬢「結構。それではごゆっくりお楽しみ下さい」
 
ロビーに通される老女とマリア。
レストルームが目に入るマリア。
 
マリア「(老女に)すみません。お手洗いに行かせて頂いても──」
老女「いいよ。行っといれ」
 
●レストルーム
豪奢で広い内装。
個室に入るマリア。便座を上げ腰を掛けて一息つく。
 
マリア「(声)イヤイヤイヤ。何よココ?サーカス?こんな隠れ家みたいな施設で一体何を見せられるのか。何故私はひょこひょこあの老女に付いて来てしまったのか。もしやここって怪しい宗教施設か何かじゃないの?だとしたら洗脳されるかも」
 
レストルームに駆け込んでくる靴音。
そのままマリアの隣の個室に入り鍵を掛ける音。息を切らしている様子。
マリア隣を気にしながら息を潜める。すると女性の声が。
 
「(声)助けて!」
 
マリア訝りながら耳をそばだてる。
 
「(声)お願い、私を救って!」
マリア「──」
「いるんでしょ?」
マリア「・・・私ですか?」
「(声)お願い。私を外に連れ出して!」
マリア「どうかされたんですか?」
「私が“道化の穴”に興味さえ持たなければこんな事には──」
マリア「道化の穴?って何です?」
 
返事がない。
 
マリア「──もしもし?」
 
やはり返事はない。
恐る恐る個室から出てくるマリア。
隣の個室を確認するも無人。
 
●ロビー
レストルームから出てくるマリア。
 
マリア「幻聴──。そもそも私は朝から狂人なのだ。とは言えやはり気味が悪い。ここは早めに引き上げるのが得策か」
 
マリア、ロビーに設置されているソファに腰かけている老女の所へ。
 
マリア「お婆さん。今日学校にどうしても提出しなければならないレポートがあることを思い出しまして失礼なのは承知の上なんですが──」
 
突然、ホールにインフォメーションの音声が轟く。
 
音声「間もなく開演になります。まだ劇場に入場されてない方は、すみやかに指定席へのご着席されるようお願い申し上げます」
 
老女、ソファから立ち上がる。
 
老女「さぁ始まるね。行くよ」
マリア「イヤそうなんですが──」
 
老女、そそくさと劇場扉へ向かう。
マリア、戸惑いながらも老女の後に続く。
 
●劇場
中はパリのオペラ座の如く豪奢で品位と威厳が漂う。
舞台を見ると赤い幕が降りている。
観客はまばら。
席に着く老女とマリア。
暫くすると舞台の上手の袖からピンスポットに当てられた黒い衣装に身を包んだスキンヘッドの男ハルドが現れる。
 
ハルド「本日はわが五色サーカスにお集まり頂きありがとうございます(深々とお辞儀。そして観客の拍手)今日の演目は“綱渡り”にて御座います。ご紹介おくれました私、この舞台の狂言師、講説のハルドと申します(再びお辞儀)さて!かつてツァラトゥストラは綱渡りの見物人を前に説教を垂れ、超人になることを説こうとしたが大衆の目的は綱渡り。賢者の御高説など誰も望んではおらずお終いには綱渡り師の落下に驚きうろたえそして興味を失いその場から大衆は去って行きました。大衆は常に刺激を欲し芸を求めますがそれが失敗した時、突然牙を剥き、そして口撃を始めます」
 
幕が上がり始める。
そこに現れたのは椅子に縛られ頭を黒い頭巾で覆われたドレス姿 の一人の女性らしき姿。
 
ハルド「綱渡り!人間は動物と超人との間に張り渡された一本の綱!彼女は渡ろうとした者。そして墜落し、精神の崩壊を招いた者。こちら側と向こう側。覗き込もうとした穴は深く、そして蛇によって身動き取れなくなったうら若き乙女」
「助けて下さい!誰か、誰か私を逃して下さい!」
ハルド「さて皆様。彼女がここで縛られてる経緯をご説明致しましょう。皆様は聞いた事はありませんか。この世界には別の世界に通じる穴が存在する事を。我々はその穴の事を通称“道化の穴”と呼んでいます。それは場所にあって場所に非ず。アダムとイヴが追放された楽園のようなピュアな世界ではなく混沌とスリル。スケールと豊かさに満ちた本当のリアル世界!」
「お願い!誰か助けて!」
 
ハルド、突如鞭で女性を打つ。
悲鳴を上げる女性。
 
ハルド「実は我々、五色サーカスには道化の穴に通じる鍵を所有しております。彼女はそれをどこで嗅ぎ付けたかこのサーカスに入団し虎視眈々と鍵を奪おうと企んでいたのです。彼女は報いを受けなければなりません。罪と罰。人間が創り出したこの概念の適用はこの五色においても採用しているのです。何故なら私達はあくまで向こう側の者ではなくこちら側の者。そしてケルベロスそのものだからです。さて。彼女の処分の方法ですが死という報いにしてはあまりにも軽過ぎる。むしろ死ぬまでの間、身もよじれる程の苦痛を味わい続けるルールなきゲームプレイヤーになって頂きましょう。即ち五色流、永劫回帰!」
 
上手袖から一人の道化師が出て来てハルドにサーベルを差し 出す。
鞭と交換にサーベルを受け取るハルド。素早く袖にハケる道化師。
ハルド鞘から剣を抜く。
 
ハルド「同じ人生を永遠無限に繰り返す恐怖。だがツァラトゥストラはそこに安らぎを見出せと説く。しかして未だかつてその思想において超人へと達した者などいないのです(剣を女性の喉元にあてがう)彼女には一度ここで死んでもらいます。そしてこれから何度も何度も同じこの舞台の上で私にこの剣で殺されることになるでしょう!」
 
女、わんわんと泣きむせぶ。
足元が濡れて行くのがドレスの変色で判る。
 
マリア「(横にいる老女に)アレ失禁してるんじゃないですか?」
老女「失禁だね」
マリア「これはお芝居ですか?」
老女「ショーだね」
マリア「もしや彼女本当に殺されるんですか?」
老女「ショーだからね」
ハルド「最後に女、何か言い残す事は」
「(泣きながら)お願いです。お慈悲を。どうかお慈悲を!」
ハルド「この処刑こそ最大にして最高の慈悲です」
 
ハルド、剣を振り上げる。
 
マリア「(立ち上がり)ちょっと待って下さい!」
 
ハルド、そして観客が一斉にマリアの方へ振り向く。
 
老女「あんた何するね!危険ね!」
 
マリア、ピンスポットが当てられ、眩しそうに光を手で遮る。
 
ハルド「(マリアに)君は何者かね!」
マリア「その女性を解放して下さい!今すぐ」
ハルド「今はショーの途中です。マナーを守りたまえ!」
マリア「今すぐその剣を降ろして。でないと警察に通報しますよ!」
 
観客一斉に笑いだす。
マリア、不審に思いケータイを取り出すも電源が入らない。
 
ハルド「ここ五色堂は隠れ宮。陸幕の連中ですら監視の外。治外法権さながら国家の秘計を持ち込むにも打ってつけの場所。ここではケータイはおろか、あらゆる通信機器は働きませんよ」
 
再び観客笑い出す。
マリア居ても立っても居られず座席から舞台の傍まで駆け寄って行く。
 
マリア「私にはこの状況もあなた達のしている事も何一つ判らないし理解していない。けどその女性を殺める事だけはヤメて!それは絶対にしちゃいけない事だから!」
ハルド「なぜ?!」
マリア「なぜと言われたってダメな事はダメよ!」
ハルド「君はどこからどうやってこの施設に入って来た?」
マリア「──」
 
●五色堂 応接室
テーブルにティーカップが一つ。カメラ引いていくとその前にマリアが一人だだっ広い応接室のテーブルの前に座っている。
 
マリア「(声)咄嗟の判断だった。自分でも何故あのように大胆な振る舞いに出たのか判らない。正直ヤケクソだったのかもしれない。今日は朝から異常事態の連続である。」
 
扉が開き先ほどのハルドがある人物を招き入れる。
優雅に入って来る老紳士。背筋は伸び、チェックを着こなし長髪をオールバックで流し、貫禄ある髭を蓄えている。
マリアと対座にあるソファに老紳士、腰を降ろす。
葉巻ケースを取り出し一本口に咥えジッポで火を点け、煙をくゆらす。
 
老紳士「この千年の五色の歴史において、綱渡りのショーが中断されるのは初めての事でね。──イヤ、五色のショーそのものが中断される事なぞあり得なかった異例中の異例。正直私も平静を装っているがかなり戸惑っている」
マリア「──」
老紳士「私はこのサーカスの団長、栗原タケルという者だ。君の名前を聞かせて貰えるか?」
マリア「マリア──。百雛マリアです・・・」
老紳士「今、幹部達は協議を重ねている。ショーを続行すべきか否か。君をどう扱うべきか──。ともすると五色そのものの解体も余儀なくされる恐れさえある」
マリア「──」
老紳士「何か質問はあるかね。マリア」
マリア「──あなた達は・・・これは何ですか?宗教?」
老紳士「世の全ての宗教を終わらせる為の宗教と言えば分かり易いか」
マリア「まったく分かりません」
老紳士「案外君のような何も知らない無垢な存在がモノガタリにトドメを刺すのかも知れないな」
マリア「話しが見えませんけど」
老紳士「おそらく上は私に君に対して殺処分命令を下してくるだろうが私は君にはどうしても生き延びてもらいたい。君は死を希望するかね」
マリア「まさか」
老紳士「そこで提案なんだが君には我々五色に道化師として入団して欲しい。そうすれば上を納得し易くなるし、君の命も守られ易くなる。勿論絶対ではないが」
マリア「・・・何をすればいいんですか?」
 
団長、チョッキのポケットから小さな粉末の入った袋を取り出しそれをハルドに渡す。
ハルド、マリアの目の前にあるティーの中にその粉末を入れスプーンで溶かす。
 
老紳士「飲みたまえ」
マリア「何を入れたんですか?」
老紳士「妙薬。説明を短縮する為の手段さ。安心したまえ。君を殺すつもりならとっくに殺してるし、羽交い絞めにして拘束するならとっくにしてる。この施設を出られない今、信用できるのは私の言葉とその紅茶を飲み干す選択肢のみ」
マリア「(声)いちいちヤバイ事態が続く。目の前の老人の理屈は如何にもだが、だからと言ってこんなとんでもない連中の、そして気味の悪い薬の入った紅茶を飲むバカがどこに居る。ホントにこの施設から出られないのか。一気にあの扉に向かって逃げ出した場合どうなるのか」
老紳士「恐れる事はない。私は君を守ろうとし、そしてある事を託そうとしている」
マリア「(声)イヤイヤイヤ。信用できるか!──さりとて私が暴れた場合彼らはどんな対応に出るか知れた事ではない。さて。どうする私・・・」
老紳士「躊躇するのも判るが時間がない。急ぎたまえ」
 
マリアに紅茶、老紳士に部屋の扉と選択肢に頭をフル回転させるマリア。
おもむろにティーカップを口元に持って行き、一気に飲み干す。
 
老紳士「勇気ある選択に賛辞を贈ろう。道化の穴を探したまえ。それを見つける事さえできれば君は自由になれる。──イヤ、自由へ至る道を見つけた事になる」
 
●列車 車内
クロスシートが進行方向に並ぶ真っ白な車内の座席の頭部部分の赤がアクセントに。
車窓は真っ暗で、どこを走行しているか不明。
一人ふと意識を取り戻すマリア。
車内は静かで妙な異空間の様相を呈している。
マリアの座席の間の通路を挟んだ隣の座席にオープニングに登場したカップルが並んで座っている。
車内は三人だけでなんとなくカップルを眺めるマリア。
 
「ねぇ。このまま私を遠くまで連れてって」
「遠く?」
「うん」
「例えば」
「遠くは遠くよ」
「グアムとか南極とかか?」
「まぁ、そーゆー事でもないんだけど」
「なんなんだろうな。人間の心の奥に潜んでるある種の蒸発願望は」
「やっぱり苦しいんだと思う」
「何が」
「この世のしがらみとか、しがらみとか──」
「それでネズミの国とかに逃避するんだな」
「いや、言い方!」
「違うのか?」
「まぁそうだけど」
「巧妙に仕掛けられてるよ。夢の国とこっちの世界の商取引。前はハレとケは明確になってたんだろうけど今は日常と祭りの境界が事故レベルだよ」
「それってダメな事なの?」
「ダメかどうかは置いといて知らないうちに人間自身が消費されてっからな。養分だよ」
「つまんない」
「何が」
「なんか色々・・・」
「じゃ面白い話ししてやろうか」
「?」
「道化の穴って聞いた事あるか」
「ナニソレ」
「ドッペルゲンガーってあるだろ?」
「別の自分に遭遇したら死ぬとか言うヤツ?」
「まぁ死ぬかどうかは知らんがもう一人の自分に出会う現象」
「聞いた事あるよ」
「これは直接俺のお袋から聞いた話なんだけど、お袋は学生の時分ドッペルゲンガーを体験してる。原則もう一人の自分は決して話しかけてこないらしい。何度か自分の姿を目撃した中ある日、お袋はもう一人の自分と交渉を図ろうとしたんだと。で成功した」
「どゆこと?」
「つまり会話したと言うんだ」
「何話したの」
「質問は至ってシンプル。あなたは誰」
「回答は?」
「さてそこだ。もう一人のお袋は逆に問われる事になった。あなたは自分をマトモだと考えてるかと。お袋はもともとひねくれ者だったから自分は狂人だと答えた。すると嘘をつくなと諭された。狂人が狂人と自覚できるならマトモという世界を理解してないといけない。だがあなたはマトモが何かすら知らない。自分を狂人と自称する事で予防線を張ってるだけ。全て頭の中の理屈に過ぎない。前提にあるのは精神のバランスを保つための自己防衛でしかないと」
「語るじゃん。もう一人の自分」
「ほんでお袋は問う。では真実とは何か。すると相手は自ら体験する用意があるならその世界に連れて行ってやると。その為には道化の穴を探せと言う。そこには理屈を超えた世界が──」
 
突然列車が急停止する。
車内の電気が消えるも暫くすると再び灯く。
すると後部車両から一人の少女が入って来る。
マリアの横を通り過ぎる少女。その姿はマリアと瓜二つ。
咄嗟に座席から立ち上がり、もう一人の自分を追いかけるマリア。
前方車両のドアを開け姿を消す。
その後を追うマリア。ドアを開ける。
 
●部屋
ベッドに横になっているマリア目を覚ます。
部屋は薄暗い。
 
マリア「(声)夢オチ?!──銀河鉄道に誤って乗車してしまった?」
 
ふと電気が灯される。
知らない部屋。窓はない。
そこに一人の見知らぬ少女が立っている。
一瞬悲鳴を上げるマリア。
 
少女「お目覚めになられましたか」
マリア「あなたは?」
少女「五色の道化。コードネームはサルヒキ。これからは私がマリア様のお世話係を務めさせて頂きます」
マリア「──」
 
●五色堂 廊下
ゴシックな廊下を歩むマリアとサルヒキ。
ある部屋の扉に辿り着き、その扉を開けるサルヒキ。
 

 

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