膣内のマイクロバイオームは、女性において極めて重要な生物学的役割を果たしています!

妊娠していない時のマイクロバイオームは、非常に動的で、月経周期等の影響を受けることが明らかになっており、妊娠時は多様性が低く安定性が高くなりますキラキラ

これらは、エストロゲン量によって変化しています。

また、膣から上の生殖管のマイクロバイオームにおける病原体の変化、感染性微生物の血液感染による局所的な微生物の変化等が不妊症の原因の一つではないかと指摘されています!!

よって、今回ご紹介する論文では、不妊症女性の膣内マイクロバイオームの特徴と、IVF中のマイクロバイオームの変化を調べていますにっこり

 

*IVF…in vitro fertilization (体外受精)

*マイクロバイオーム…ヒトの体に共生する微生物

 

・多様性とは

生物には、植物や動物から細菌などの微生物まで多様な種があり、地球上には500万~3,000万種の生物種が生息すると推定されています。この論文での多様性は、微生物そのものの種類の多さのことを指しています!

 

・α多様性とβ多様性

α多様性とは、1つの環境(不妊症女性のマイクロバイオーム、非不妊症女性の膣内マイクロバイオームそれぞれ)に存在する微生物の多様性です。

β多様性とは、2つの環境(不妊症女性と非不妊症女性の膣内マイクロバイオーム)に存在する微生物の違いに着目した多様性です。

 

対象者は、不妊症女性30名、非不妊症女性92名です。

それぞれ以下の4つのグループに分けられました。

B-I群:卵胞期の3日間に不妊症の女性から採取したサンプル

A-I群:GnRhアゴニスト、r-hCG投与後に不妊症女性から採取したサンプル

N-O群:卵胞期の3日間に非不妊症女性から採取したサンプル

O群:排卵期の3日間に非不妊症の女性から採取したサンプル

 

α多様性の解析から、卵胞期のB-I群とN-O群を比較すると、B-I群で膣内マイクロバイオームの多様性が有意に減少していました。

また、β多様性の解析から、B-I群の膣内マイクロバイオームは、N-O群と有意に異なることが明らかになりました。

排卵期のA-I群とO群を比較すると、α多様性で、O群の多様性が有意に減少していました。また、β多様性でも差がありました。

この結果を詳しく調べたところ、卵胞期で不妊症の女性は、非不妊症の女性より乳酸菌が少ないことがわかりましたガーン

乳酸菌は、病原体侵入のバリアとして働いたり、乳酸菌が少ないと早期流産率を上昇させる特定の微生物のコロニー形成を抑制できなくなります煽り煽り

さらにN-O群とO群を比較し、排卵期に膣内マイクロバイオームに変化があり、これはホルモンに影響を受けている可能性があることが示唆されました。

IVFでのホルモン刺激によって、膣内マイクロバイオームがどう変化するか調べたところ、不妊症の女性の膣内マイクロバイオームは、ホルモンに対して全体的に感受性が低いが、一部ホルモン療法において感受性が高い菌株が存在することがわかりました!!

 

妊娠において、ホルモンの増加減少により、膣内マイクロバイオームの多様性が変化していくことが正常であるが、不妊症の女性の膣内マイクロバイオームでは、変化が乏しいことがわかりましたネガティブ

このような、ホルモンに対して感受性が低いことが不妊の原因の1つになっている可能性があります大泣き

今後は、膣内マイクロバイオームとIVFでの妊娠成績についての研究を行っていくようなので、結果を待ちたいと思いますニコニコ

 

当院でも子宮内マイクロバイオーム検査であるEMMAを実施しています!!

詳しくはこちらまでキラキラ

 

*2022年4月より保険適用、2024年6月の診療報酬改定により、料金に変更があります。

料金の詳細については下記リンクをご参照ください。

 

保険適用:

自費診療:

 

 

参考文献:Characterization of the vaginal microbiome in women with infertility and its potential correlation with hormone stimulation during in vitro fertilization surgery. Msystems 5.4 (2020): 10-1128.