葉酸とビタミンB12が生殖補助医療(ART)に及ぼす影響についての論文を読みましたので、ご紹介します
不妊治療において食事がARTに及ぼす影響についての研究は以前から行われています。
妊娠前の葉酸の摂取は、総卵子数及び成熟卵子数、胚の質、妊娠率を改善する可能性があるという論文が発表されています。
また、ビタミンB12欠乏と女性不妊症との関連が認められており、血清及び卵胞液中のビタミン B-12 濃度は胚の質と正の相関があることが報告されています。
今回の論文は、葉酸とビタミンB12がARTの結果にどのような影響を及ぼしているのかが検討されています。
2007年 - 2013年の間にマサチューセッツ総合病院不妊治療センターでの前向きコホート研究に参加している100 人の女性を対象としています。
不妊治療開始から3 - 9 日目の間に採取した血液で葉酸とビタミン B-12を測定しました。
結果は、血清葉酸濃度が高い女性(>26.3 ng/mL)は、葉酸濃度が低い女性と比較して、臨床妊娠率と生児出生率が有意に高いということが分かりました。
また、血清ビタミン B-12濃度が高い女性(>701 pg/mL)も、血清ビタミン B-12濃度が低い女性と比較して、着床率、臨床妊娠率、生児出生率が有意に高い結果となりました。
さらに、血清葉酸及びビタミンB-12濃度の両方が高い女性は、両方が低い女性と比較して、生児出生率が高くなるという結果が得られました
以上の結果から、ART治療前の葉酸とビタミンB-12の血清濃度が高いほど、生殖補助医療後に妊娠・出産できる可能性が高くなるという結果が分かりました
ビタミンB-12は、葉酸依存性メチオニン合成酵素の補酵素です。
メチオニンの誘導体であるS-アデノシルメチオニンは、脂質、タンパク質、DNAのメチル化における体内で重要な要素であり、S-アデノシルメチオニンが不足するとDNAのメチル化を低下させ、遺伝子発現のパターンに異常が生じる可能性があります。
また、メチオニン合成酵素の障害として、ホモシステインの蓄積があり、これは細胞毒性や酸化ストレスを誘発し、卵子成熟、胚発生、内皮細胞の障害につながる可能性があります。
絨毛細胞が高ホモシステインにさらされると、細胞のアポトーシスが増加し、胎盤形成の成功に不可欠な絨毛機能の阻害につながる可能性もあると論文で述べられています。
このことから、妊娠を希望されている方は、栄養補助食品や食事で葉酸及びビタミンB12を積極的に摂取した方がいいかもしれません
【参考文献】
Association between serum folate and vitamin B-12 and outcomes of assisted reproductive technologies (Audrey et al., The American Journal of Clinical Nutrition 2015)