当院で勤務されている澤田祐季先生による論文がRBMO誌に掲載されましたので、

その概要をご紹介します。

 

 

「人工知能を用いた胚画像の解析による非侵襲的な胚選択法の確立」

 

タイムラプスシネマトグラフィ(TLC)により得られた画像をAIに学習させることで、生児獲得に至る可能性の高い胚を非侵襲的に選択する方法の検討をしました。

 

TLC解析にて10~15分間隔で撮影された移植胚470個から、1つの胚あたり約70~700枚、計140000枚の画像を用い、それぞれの画像に生児獲得成功または不成功の正解のみを与えたうえで、ディープラーニングさせました。

作成されたAIが算出した各画像の成功予測値で、生児獲得を予測できるかを後方視的に検討しました。

一方、ディープラーニングによって作成されたAIの画像認識能力は非常に高いですが、どのような特徴を根拠に判断したのかは不明です。

そこで判断根拠を可視化できるAttention Branch Networkというネットワークを用い、生児獲得可否に関連する胚の特徴を見出すことも試みました。

また良好胚、不良胚に分類し、形態学的な胚評価とAIによる胚評価の関連についても検討しました。

 

結果は、生児獲得成功胚群の方が不成功胚群よりも、採卵時の年齢が有意に低いものの、その他は生児獲得の有無で差はありませんでした。

また生児獲得成功胚群の方が不成功胚群よりも、成功予測値が有意に高い結果となりました。

さらに成功予測値の基準を作成し、その値より成功予測値が高い胚は、低い胚よりも生児獲得胚の割合が有意に高く、成功予測値が上昇すると、その割合が増加する傾向も認められました。

AIが算出した成功予測値による評価と形態学的評価の関連については、一致度を表すkappa係数が低く、二つの評価はほぼ不一致と考えられました。

またAIによる評価と形態学的胚評価を併用した場合、それぞれ単独で評価をした場合よりも、陽性的中率、陰性的中率が共に高くなりました。

その上で胚選択の順序を考えた場合、AIによる評価、次に形態学的評価がともに良好であった胚を優先的に移植し、形態学的評価が不良でもAIによる評価が良好である胚を移植した方が、生児獲得に至る確率が上昇した傾向がありました。

AIの判断根拠を可視化したところ、AIが生児獲得成功や不成功を予測できた胚に共通する特徴を認識できるまでには至らず、生児獲得の予測に有用な胚の特徴を見出すことはできませんでした。

しかし、全体を通して透明帯周辺にAIの注目が集まっている画像を多く認めたため、透明帯の厚みを計測し、生児獲得の有無やAIによる胚評価の違いで比較しましたが、有意差は認めませんでした。

 

これらの結果により、作成したAIが算出した成功予測値は生児獲得の予測に有用であると考えられました。しかしその予測性能は、現在までに報告されているTLC解析によって得られるパラメーターによる生児獲得予測と同程度であり、現時点ではAIと形態学的評価を併用した胚選択法が最も精度が高いと示唆されました。

また本研究では、生児獲得可否に関連する胚の特徴を見出すことはできなかったものの、AIの評価と従来の形態学的評価の一致度が低かったことから、AIは従来の形態学的評価とは異なる観点で胚評価を行っている可能性が示唆されました。