オンライン開催となった日本卵子学会(2021.6.25-7.12)、先日行われた中部生殖医学会(2021.6.19)で当院からあわせて4題の一般口演を発表しました。

そのうち、受精卵の初期分割に関連する2題についてご紹介します。

 

 

第62回日本卵子学会

Direct cleavageと胚盤胞発生率および妊娠率との関連: コンパクションに着目した検討

 

 

 

 

一部の胚では、細胞同士が融合(コンパクション)して桑実胚から胚盤胞になるときに、いくつかの細胞が弾き出されている現象がタイムラプス培養中に見られます。この「コンパクション時の細胞除外」は、*ダイレクト分割が起きた胚で多くなり、胚盤胞発生率が低下しますが、胚盤胞になれば移植妊娠率は低下しませんでした。

 

*ダイレクト分割(direct cleavage):1つの細胞が3つ以上に分割する現象(通常は1つの細胞が2つに分割する)。ダイレクト分割では染色体が正常に分かれず染色体異常細胞が出来ることが多いとされており、胚盤胞発生率が低下しますが、胚盤胞になれば妊娠率、流産率ともに影響はないとの報告が多くあります。

 

 

【Direct cleavageの動画】

ダイレクト分割。1細胞から3細胞に分割します。

 



 

 

【コンパクションから割球が除外される動画】

分割が進むと細胞同士が融合(コンパクション)して胚盤胞になりますが、一部の細胞(画面下の方)はコンパクションしていません。

 



 

 

第42回中部生殖医学会

Direct cleavageで発生した割球はその後どうなるのか

 

 上記にお示ししました「ダイレクト分割が起こると胚盤胞発生率が低下するが胚盤胞になれば妊娠率、流産率ともに影響はない」ことについて、なぜそうなるのか理由が明らかになっていないため、ダイレクト分割で発生した細胞がその後どのように発育しているのかをタイムラプス撮影データから解析したところ、それらの細胞の約7割が分割停止するか、コンパクションに取り込まれないことによって、胚盤胞になっていませんでした。

 

 

今回の2つの検討から、ダイレクト分割で発生した細胞はその多くが発育から取り除かれて胚盤胞にならないため、胚盤胞発生率が低下しますが、胚盤胞になることができれば胚盤胞自体の妊娠する力に影響を与えていないことがわかってきました。

 

 

受精卵の初期の分割は、胚盤胞になれるかなれないかを大きく左右する重要なファクターです。しかし初期分割が通常とは異なる動きをしても、その胚が胚盤胞になれば妊娠する力に影響はないということがその理由とともに明らかになってきていると感じています。

 

 

ダイレクト分割についての動画受精卵の初期分割をYouTubeにアップしました。興味のある方はぜひご覧下さい。