非侵襲的着床前診断(Noninvasive preimplantation genetic testing : niPGT-A)とは

 

通常の着床前診断(PGT-A)は胚盤胞生検で行われるものが主流です。

この方法は将来胎盤になる細胞(TE)の一部を採取(生検)して染色体解析を行うため、胚へのダメージが少なからずあることや、低グレードの胚は生検自体が行えないとの報告もあります。

胚盤胞生検についての詳細な記事はこちら

 

そこで胚盤胞になるまで培養に使用していた培地中のDNAを解析して胚の核型を評価しようとするものが非侵襲的着床前診断(niPGT-A)です。

 

今回ご紹介する論文では、niPGT-AとTE生検の結果を比較して臨床で有用か否かを検討しています。

 

対象:

2019年7月から2020年5月までに得られた166個の胚盤胞

 

結果:

niPGT-AによるDNA増幅の失敗が37.3%(62/166)、

TE生検ではDNA増幅の失敗はありませんでした。

 

niPGT-AのDNA増幅成功率は

5日目胚盤胞17.6%(6/34)

6日目胚盤胞67.3%(70/104)

7日目胚盤胞100.0%(28/28)

 

niPGT-AとTE生検の両方で結果が得られた胚は104個で、

そのうち42例(40.4%)でniPGT-AとTE生検で染色体解析結果が異なりました。

 

166個のうち21.7%(36/166)がTE生検で正倍数性胚と判定され、胚移植されました。

出生率は61.1%(22/36)で、この出生した22個の胚のうち63.6%(14/22)はniPGT-AでDNA増幅に失敗し、36.4%(8/22)で染色体が解析可能でした。

また、この22個の胚はniPGT-Aで22.7%(5/22)が正倍数性、13.6%(3/22)が異数性と判定されました。

 

一方TE生検で正倍数性と診断され、出産に至らなかった14個の胚では42.9%(6/14)の胚でniPGT-AによるDNA増幅に失敗し、niPGT-Aで35.7%(5/14)が正倍数性、21.4%(3/14)が異数性と判定されました。

 

以上のことからこの集団ではniPGT-Aを使用してもどの胚が出産に至る胚か正確に予測することができないと結論付けています。

 

さらに本論文でのDNA増幅の失敗率の高さですが、5日目に胚盤胞到達した胚でDNA増幅失敗率が高く、7日目に到達した胚で全てDNA増幅が成功していることから、胚と培養に使用した培地との接触時間が長いほどDNA増幅が成功しやすくなるのではないかと考察しています。

 

しかし、DNA増幅に成功してもniPGT-AとTE生検とで異なる結果が出ているものがあります。この結果についての詳細な考察は本論文ではされていませんでした。

 

当院でも本論文と同様に培養液中のDNAを解析しています。

胚盤胞腔と培養液にみられる染色体核型の由来

 

DNA増幅成功率、TE生検結果との不一致など本論文と類似した結果となりました。

TE生検結果との不一致の原因については、培養液中に排出されたアポトーシスした細胞由来のDNAが影響を与えた可能性があると考察しました。

 

発生初期に排出されたアポトーシスした細胞由来のDNAによる影響を除外するために、本論文では培養3-4日で培地の交換をしています。それにも関わらず、niPGT-AとTE生検で結果が異なることから、胎児の核型判定は現状では難しいと考えます。

 

TE生検は侵襲性が低いといえど低グレード胚には行えず、また手技に熟達が求められるため施行できる培養士が限られてしまうことから、niPGT-Aの無侵襲性、簡素な手技で行えるという利点は大きいとは考えますが、現時点では十分な手技といえない状況です。

 

今後のniPGT-Aの技術発展に期待します。

 

参考文献:

Noninvasive preimplantation genetic testing for aneuploidy exhibits high rates of deoxyribonucleic acid amplification failure and poor correlation with results obtained using trophectoderm biopsy.

Fertility and Sterility March 18,2021