彼の出演公演記録を以下のように纏めている関係から、過去の出演作や演奏会についても検索する機会が多い。その検索解像度はまちまちで、すぐに精度の高い情報に出会えることもあれば、無論そうでない時も

 

その中でも最近頓に悩まされてるのが『クリングホッファーの死』。現代オペラを代表する作曲家であるジョン・アダムスが手掛けたこの作品は、実際に1985年にパレスチナ解放戦線が起こした客船ハイジャック事件を描いており、そこで殺害された被害者を題している

 

かつて1991年に初演されてからこちら何度も再演が繰り返されているものの、彼が出演を予定していたMETによる2014/15シーズンにおいては中東和平交渉が再決裂したことによるイスラエル軍のガザ侵攻が行われたことやそもそも作品の内容が反ユダヤ主義的であると看做されるなどの理由から上演の中止を求めてデモが起こっていたことは承知していた

 

こうした事態を重く見たピーター・ゲルブ総裁の判断によってMET LIVE in HDによる中継や配信が中止されはしたものの、実公演自体は予定されていた7公演を滞りなく完走したはずだ。「ただし、かねてより出演を公表していたアレクサンダー・ルイス氏は、何らかの理由によって降板した」というのが私個人による理解だったのですが…

 

 

あれ、普通に出演していらしたんですね…? この一年前後に敢行された複数のインタビュー記事において「来シーズンは、件の作品でモルキ役を歌います」と宣言してたし、同作主演陣におけるテノール域は同役のほかに存在しないので、あたら誤植や誤認の可能性は少ないはずだ

 

ただ、どれだけ探し当てようと試みようとも、あらゆる劇評に名前がなかった事実をどう解釈するべきなんだろう。私の記憶する限りでは、当該シーズン前後でメトロポリタン歌劇場にも白人偏重主義に対する刷新があったはずで、それを理由に出演それ自体を取り止めるのは個人的に考え得る上で最悪な展開だと思ってた。もしこの出演歴が正しければうれしいし、そうであることを願うよ

 

ただ、その場合に一切の劇評は疎か公演記録が残っていないのをどう捉えたら? 引き続き情報を探すにしてもこの数ヶ月を泡沫に帰した作品について新発見に出会える気がしないんだけれど…