谷 査恵子 様
拝啓
4月に入って新年度も始まり、各地で桜が満開を迎えておりますが、如何お過ごしでしょうか。
先日より、職場を長期にわたって休まれているとお聞きしました。
心身の変調によるものか、はたまた別な事情によるものなのか、残念ながら知る由もありませんが、もし前者であるなら、一日も早いご回復をお祈りするものです。
(いまの貴方にとって、若干適切さを欠く表現が含まれるようでしたら、お詫びいたします。)
あ、大変失礼をば。
閑話休題。
この時期、貴方の新しい後輩たちが、希望と緊張をもって、新規採用で入省してくる時期ですね。
およそ20年ほど前のあなたも、そんな「公務員一年生」のお一人だったのではと、ご推察申し上げる次第です。
さて今回、このような不躾極まるお手紙差し上げましたのは、貴方が入省当時、とある一枚の書類にサインされたことを、今も覚えておられるかどうか、確かめたかったからです。
その書類、字数にしてわずか100字足らずの、ごく簡単なものです。
「服務の宣誓」という名で知られるものです。
あえてですが、全文を記載します。
私は、国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すべき責務
を深く自覚し、日本国憲法を遵守し、並びに法令及び上司の職務上の
命令に従い、不偏不党かつ公正に職務の遂行に当たることをかたく誓
います。
貴方が今おかれている状況の厳しさ困難さは、察するに余りあるものがあることは当然ながら、今こそ、この宣誓文の重みを頭の片隅に留めておかれることを切望するものです。おそらくは、貴方ご自身の意向では如何ともし難いことと思われますが、一片でも自己の良心に照らし、判断できる余地があるならば、この宣誓書の趣旨に沿った決意をされることを、蔭ながら切望するものです。
聞けば、トップレベルの学歴でありながら、「現場に携われる業務を希望」という理由で、キャリア官僚ではなく一般のノンキャリを志望されたとのことですね。
その初志をお忘れでなければ、「国民全体の奉仕者」として何を為すべきか、賢明な貴方には既に分かりすぎるほどお分かりと存じます。
では、どうかくれぐれもご自愛のほどを。
敬具
2017年4月9日
仁和寺街道AIAI図子