2016-08-11 07:22:33

メージ症候群とDBS(脳深部刺激療法)

テーマ:メージ症候群
DBS(脳深部刺激療法)は、パーキンソン症候群などの不随意運動に実施される治療法で、後に脳内の植え込み装置を取り出すことは想定されていないのではないかと思う。

実際に手術現場を見たことはないが、脳神経外科医とその施行内容と症状について紹介状を通じ議論したことがある。最後の手段的な治療なので、その前に薬物等で試行錯誤をされていることが多い。

パーキンソン症候群はほとんどが高齢者なことや、この治療法が考慮される患者さんが困ってる症状の規模が大きいことから、後戻りが効かない治療法だとしても患者さんや家族に受け入れられやすい。

精神科ではこの治療法を実施された人に遭遇するケースは、パーキンソン症候群で、なお精神症状が残遺しており、その治療を依頼されるケースが多い。(多いとはいえ、症例自体は稀)

稀に抗精神病薬などの治療の際生じた後遺症(主に難治性ジストニア)でやむなく実施された人がいる。このケースでは、意外に若い人にも実施しされていることがある。

一般に、パーキンソンやジストニアなど以外の精神症状への効果は期待されていないと思われる。感覚的には精神病状態を悪化させるイメージも湧くため、ずっと以前は難治性のジストニアがあったとしても精神病には避けられていたのではないかと想像する。ボトックスなどに比べ、そんな風に思われるからである。

最初は精神病の薬物治療の際に生じた難治性のジストニアに対し、DBSはやむなく適応外的に実施されたと思われる。当初想定されたほどの重度の有害作用が認められなかったため、稀にそういう若い患者さんに遭遇するのだろう。

ジストニアは極めて対処が難しい病態だが、若い統合失調症などの患者さんでは、ECTの実施なしで、DBSを施行されていたことに不満を持った。

その理由は薬剤性のジストニアで、特に統合失調症の人では、ECTは極めて有効だからである。DBSはジストニアに有効な治療法だが、いったん実施されると、もはやECTは実施できない(と思う。感覚的に装置が故障してもおかしくない)。

ある若い患者のDBS施行後、残遺する精神症状の治療をまかされ非常にうまくいき、幻覚妄想は完全に消失した。そのことは過去ログに少し記載がある。効果的だったのはエビリファイの大量処方だった。それ以前はほかの抗精神病薬(ルーランの大量)が使われており、ジストニアにも良くなかった。

エビリファイは第一感で良さそうだが、本人は過去に上手くいかなかったことがあり難色を示した。しかし本人と家族に最初からエビリファイの大量を使えば全く違った結果になりそうだと説明し、上手くいったのである。

後に本人にDBSの施行後、いったいどのような症状に最も効果があったのか聴いたことがある。その人によると、メージ症候群には非常に効いたと言う話であった。メージ症候群もジストニアの1つである。(その人のメージ症候群は自覚的にも他覚的にも完全に消失している。)

ただ、完全には足などのジストニアは消失していないので、同じジストニア系症状でも、有効性の相違があると思われる。本人によれば、ボトックスはほとんど効果がなかったという。

なお、DBSの良いところはパワーを調整できることだと思う。本人によると、最初はさほど効いていなかったが、パワーを上げ調整すると有効になったらしい。DBSは効果の持続性と調整が可能なことが良い点である。良くない点は定期的にバッテリーの交換が必要なことだと思う。

DBSを施行され、なお残遺しているジストニアに対し、リボトリール、ワイパックスやダントリウムなどの併用療法も有効である。(本人がそう言っている)。それに対し、ユベラNやメチコバールはさほど効果が体感できないようである。

ツムラ68芍薬甘草湯なども一見、治療的な印象だが、持続性のあるこのタイプのジストニアは、一瞬に生じるこむら返りと異なるためか、かえって歩行しにくいと言う話を聴いた。

バッテリーの性能に関しては、例えばスマホなどでバッテリーのへたりが少なくなるなどの技術進歩が著しいなどから、将来はバッテリー交換の期間が延びる可能性がある。

参考
長期の抗精神病薬投与による嚥下障害について
メージ症候群(後半)



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2007-03-01 20:58:33

メージ症候群(後半)

テーマ:メージ症候群
初診時、その女性患者さんは、本態性振戦とメージ症候群がミックスしているような感じだった。どこで治療しているか聞くと、某大学病院の神経内科と言う。神経内科と精神科は名前は似ているが、全然違う。神経内科は、神経・筋に関する難病をしばしば扱っており、特に僕が精神科に入った当時は、診断するとそれで終わりで治療法が全然ないというのがけっこう多かった。

診断して終わりじゃ、ドクターがオナニーをして終わりじゃんとマジ思った。患者さんにとって、病気の苦痛を和らげるとか利益がほとんどないから。(さんざんきつい検査をして、結果、何も治療法がありませんじゃむごすぎる)

あれに比べれば、内因性精神病の方が断然治ると思う。僕は稀に神経内科の範疇の疾患に遭遇するが、わりあい遭うのが、脊髄小脳変性症とヘルペス脳炎である。ヘルペス脳炎には不思議によく会う。主訴は「奥さんの首を絞めた」とか。だから精神科に来るのである。

この2つのうち、前者はまだ本質的な治療法がない。今は、神経内科でも遺伝子レベルの治療法が進歩しているので昔ほどオナニーではなくなっていると感じる。

神経内科のドクターは今も昔も精神科より断然上のレベルの医療をしていると確信しているだろう。しかし精神科医は、あまりそのようなことは考えていない。最初から、良し悪しや勝ち負けとは無縁の世界が精神科なのである。

僕は初診でひとめ診て、明らかに神経内科と思ったら、もう診察せず神経内科に紹介する。今回の場合は、患者さんの処方を見たら、イマジネーションが無さ過ぎると感じたので、少しうちで治療してみる気になった。メージ症候群はどういう治療をしてもなかなかうまくいかない疾患で、使う薬物は精神科医が使い慣れているものが多いこともある。

彼女の処方で、最も謎だったのは、オーラップが処方されていたことであった。もしオーラップが処方されていなかったら、治療を引き受けなかったかもしれない。

たぶん、オーラップはアメリカでジルドラトゥーレット症候群に適応があるのと、そういう使い方で効果があったという論文でも見たのだろうと思った。ジルドラトゥーレットは子供に発症する疾患だけど、僕は1度だけ成人発症例を診たことがある。

どう考えてもその患者さんに対し、オーラップはマイナスにしかなってない。こういう普段使ったことがないような薬物を、本とか論文の知識だけで治療しようとするからかえって悪くなるんだと思う。

最初、オーラップを中止し少し薬物を整理した。それだけで振戦などの不随意運動は少し良くなった。

メージ症候群は、おそらく大脳基底核および脳幹の機能の変調が生じていて、これを改善すると良くなる可能性がある。これは言うほど簡単なことではない。適応外なのだが、しばらくヒルトニンを静注することにした。ただ、ヒルトニンは高すぎるし、しばらく継続しないといけないので、ジェネリックのオリストン(薬価が3分の1)を使った。この薬物は脳の下のほうの不調を改善するのである。

オリストンをしばらく継続していると、両足の振戦などの不随意運動が消失した。最初、とにかく足だけは最初に改善したのである。僕は、彼女はメージ症候群は存在しているとしても、他の疾患がかぶっているのか、あるいはメージ症候群でここまでの症状が出るのか、あまり考えていなかった。あまり大きな問題ではないと思ったことがある。

オリストン以外の薬物療法は、抗パーキンソン薬、抗てんかん薬、ベンゾジアゼピン、グラマリール、ボツリヌスA毒素などがあるが、僕はリボトリール、グラマリール、眠剤を主体に使っていた。眠剤を中止したら症状が悪化するので中止できなかったが、基本的にベンゾジアゼピンはある程度有効なことがわかる。

そうして、遂に両上下肢の振戦が消失し、最後にメージ症候群の中核的症状がボスキャラ的に残ったのである。

彼女の場合、「目が開かないので困る」という訴えが多かった。メージ症候群は眼瞼痙攣と口・下顎・頚の付随意運動を呈する疾患で、独特なしかめ面顔貌を呈する。僕はすべて女性患者しか診たことがないが、男女比は1:2くらいらしい。しばらくあれこれ薬を入れ替えていたが、それ以上、ちっとも良くならなかった。これは限界かもしれないと思った。

ある日、朝のまどろみの中、ひょっとしたら、エビリファイを処方すれば、このメージ症候群の中核症状が良くなるのではないだろうか?と思ったのである。

エビリファイは、経験的に統合失調症の表情を改善する。目はぱっちり開くようにさせるので、こういう症状には良いのではないかと思ったことがある。エビリファイは、どういう機序かわからないのだけど、表情を構成する筋肉に関与しているのは間違いなかった。

それに薬理学的にも、ドパミンが過剰に放出されている時は遮断薬として抑制的に働き、逆にドパミンが不足している時はドパミン作動薬として刺激するドパミンD2受容体部分アゴニストなので、こういう伝達物質の流れを安定化させるような薬物はいかにも良さそうに見えるのである。

「バカ~~」
なんで早く思いつかなかったんだろうかと思った。

最初1.5mg1週間使ったところで、頚部の振るような不随意運動がかなり減ったのがわかった。本人は、目のぐあいも大分良いと話していた。診察中、目を閉じて首を振る動作が全然なくなっていたのである。

結局、いったん3mgまで増やしたが、3mgより少ない量がより良いと感じた。エビリファイは少量でも他の薬を押しのけるほど強力なのである。現在、1mg~1.5mgで様子を見ているが、あるいは0.5mgくらいでも良いかもしれない。

今は、その女性患者は他覚的には全く症状がない。非常に表情がはっきりしてさわやかな顔つきになった。本人は病院に来ている時はわりあい良いけど、家に帰ると少し悪いことがあると言っているので、緊張時の方が症状が良いのかもしれない。

こういう風に言っているということは、ベンゾジアゼピンを減らした方がかえってよいのではないかと思い始めている。結局、エビリファイでメージ症候群の90%は改善してしまった。

メージ症候群をここまできれいに治したのって、生まれて初めてよ。(完全には治ってないけどね)

参考
メージ症候群(前半)

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2007-03-01 20:52:44

メージ症候群(前半)

テーマ:メージ症候群
この女性患者さんは、偶然うちの病院にやってきた。

なぜ来たか聞いてみた。僕はうちの病院に来た理由を、初診の時に聞くことが多い。これは僕には非常に興味あることなのだ。彼女によれば、近所の女の人でいつも首を振っていた人が急に良くなったので、何処の病院にかかっているか聞いて受診したのだと言う。

その女の人とは、統合失調症の女性患者さんで長いことセレネースの単剤で治療されていた。ずっと何十年も働いていて社会適応が良い人だったのである。ただ、その患者さんはセレネースの少量でもジスキネジアが生じており、本当は非定型抗精神病薬に変更したかった。

しかし、何十年もの間きちんと働いている人に非定型抗精神病薬に変更なんて危険なことはできない。セレネースも3mgくらいしか処方されていないことも変更しなかった理由だった。(もちろん、本人が変更を嫌っていたこともある)

ある時、ちょっと調子が落ちたので本人を説得して、清水の舞台から飛び降りる気持ちでリスパダールに変更した。

すると、ぴったりとジスキネジアが止まった。ここまでならハッピーエンドなのだが、この人の場合はそうならなかった。それから半年後、急激に悪化したのである。本当に18年ぶりくらいの増悪だった。本当に非定型は不安定と思われても仕方がない。安定度は定型に劣るのである。

結局、入院治療になった。入院させてみると、悪化したその患者さんは大変な人で、緊張病性興奮状態では手がつけられなかった。保護室に収容したが、すぐにウンコだらけになってしまった。便弄というのでしょうか?この症状は今の若い人ではあまり見ないね。

セレネースとかトロペロン3A連日でも全然効果がないクラスだったのである。毎回の服薬だけでも大変だった。体が大きいし力は強いしでどうしようもなかった。いろいろ注射も含め多剤併用になってしまったのだが、僕はメチャクチャな多剤併用でも、どの薬が効いていてどの薬がダメなのか、自分の患者さんならわりあいわかる。もちろん間違うこともあるけど。これは薬の特性と患者さんの普段の様子を見ているので有害作用は特にわかるのである。

ある時、フルメジンとジプレキサが良いと確信した。糖尿病を恐れないといけない体型だったので、ジプレキサを使い始めたのが遅かったのである。

結局、薬物療法は、ジプレキサザイディス20mgとフルデカシン25mgだけにした。そのうち保護室を出られるようになり、本当にジワジワ効いている感じで、3ヵ月後に退院。この処方だと全然ジスキネジアが出なかった。今は職場にも復帰している。家族に今の様子を聞いてみたら、5年前よりもずっと良いんだそうだ。大人しくなったし、家でも静かに過ごしているらしい。

今は、ジプレキサザイディス15mgだけで、フルデカシンは止めてしまった。最終的に、ジプレキサザイディス5mgか7.5mgくらいが適量な感じがしている。この人の近所の人が、このメージ症候群(Meige症候群)の女性患者だったのである。

参考
メージ症候群(後半)

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2007-03-01 20:46:30

朝のまどろみの時間

テーマ:メージ症候群
「春眠、暁を覚えず」で思い出したけど、朝起きてからふとんから出るまでの時間って、感覚的にはとても長いよね。あそこだけ時間の経過が遅いような。起きていればだけど。

あのまどろみの時間はとても心地よくて、子供の頃は不登校になりそうだった。僕は目覚ましなしでもピッタリ8時に目が覚めることが多い。朝食は摂らないので、これでも始業には間に合う。最近、天候不順のせいかちょっと体内時計が狂っていて、1時間くらい早く目が覚めることがある。

それから、グズグズとふとんの中でいろいろ考えているんだけど、そのまどろみの時ってなぜか良い考えが浮かぶことが多い。

あっ、「あれを使ってみたら良いかも」とか。

もう、何を思いついたか、いちいち憶えていないんだけど、これはごく最近の話。ある患者さんの腸の動きがずっと芳しくなくて、いつも麻痺性イレウス気味で気色悪し。

ある朝、「ツムラ61をツムラ60にしたら良いかも?」と突然思った。

実際、変更してみたら、これがずいぶんと良いんだ。

ツムラ61=桃核承気湯
ツムラ60=桂枝加芍薬湯


ああいう時間って、ちょっと特別なのかもと思う。

参考
この項は、
メージ症候群(前半)
メージ症候群(後半)
に連続しています。


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