カッコーの巣の上でに出てくる権威主義的な婦長 | kyupinの日記 気が向けば更新

カッコーの巣の上でに出てくる権威主義的な婦長

このブログを始めた2006年頃、映画「カッコーの巣の上で」の記事を2つアップしている。これらは今読んでも非常に興味深いのでリンクカードでアップしたい。

 

 

 

特に(その2)は凄いと思わないか?

精神症状でほぼ器質性疾患と診断できることは、精神科医として視野が広がるので非常に良いと思う。

 

「カッコーの巣の上で」はまだ高校生か大学生の頃、精神科の先入観がなく映画館で観た。主人公はジャック・ニコルソンだが、同じくらい存在感があったのが婦長を演じたルイーズ・フレッチャー(Louise Fletcher)である。

 

 

当時の婦長役の彼女のイメージは「なんと非人間的で情け容赦がない婦長だろう!」といったところだった。こう書くと、今ホットなニュースで挙がっているあの人に似ている。

 

なお、この映画の中では懲罰的にECTを施行される場面が出てくる。過去の日本の精神科の歴史で、懲罰的にECTが実施されたことがあるかというと、大昔に実際あったのである。ただし、その施行した医師は精神科医ではなく、精神病の精神症状が理解できず、精神病患者をあまりに怖がって施行したようである。(身体科の医師、しかも院長)

 

実際はそうではなかったかもしれないが、周囲の看護者のコメントにそういう文脈が出てくるので、「患者が怖くてECTを施行した」というのがおそらく正しい。

 

この映画は精神科医師の存在感がまるでない。ジャック・ニコルソン対ルイーズ・フレッチャーの構図である。ジャックニコルソンは実際には精神病ではなく、詐病を演じて精神科病院に入院していると言う設定である。

 

最終的に、ジャック・ニコルソンは懲罰的にロボトミーを施行されてしまう。精神科病院の権威の象徴のような婦長を絞殺しようとしたからである。映画内ではロボトミー手術のため、ジャック・ニコルソンはろくに喋ることも考えることもできなくなったのであった。

 

それを見た友人(ネイティブ・インディアンの患者)がジャック・ニコルソンを窒息死させ、窓に重い設備をぶつけて破壊し脱走するというエンディングである。

 

なお、過去にロボトミーを施行された患者さんを数名受け持ったことがあるが、全員、喋ることができた。彼らは一様に空虚だったので、非常に陰性症状が重い統合失調症の患者さんと差がなかった。僕は「この患者さんは過去にロボトミーを施行された」と言われるまで、そうとは思わなかったほどである。

 

大人しいので看護は容易だったので、よほど扱い辛い精神症状があったのかもしれないと思った。予測風に書いているのは、カルテにその詳細が記載されていなかったからである。

 

精神科医になりルイーズ・フレッチャーのような権威主義というか、非常に厳しい婦長さんは案外いないものだなと思った。看護長も同様である。

 

ところが、稀にルイーズ・フレッチャー的な婦長だったであろうと思われる人もいる。そのようなタイプの特徴を以下に記載したい。

 

〇非常に頭が良く仕事もできるので、常に部下に対し支配的である。

〇その結果、部下が伸びない(なんでも婦長がやってしまうため)。

〇患者さんが良くなっているか悪くなっているかの感覚が優れている。

〇薬が効いているのかあるいは悪化させているかの判断も鋭い。

〇薬を減量することを嫌う(悪化した際に仕事が増えるため)。

〇基本、精神科患者は下に見ているので、接遇的には相当に悪い(あしらうような接遇)。

〇つまり患者さんから、非常に怖い、あるいは嫌な看護師に見られている。

〇そのような良くない接遇が他の看護者に伝染する。

〇病棟内が、優しくない看護者ばかりになるので、患者さんからは不評である。

 

このような看護者は長く入院しているような古い患者さん(70歳以上)にはなんとか耐えられるが、若い人には耐えられない。

 

ロシアとウクライナの戦争のニュースを見ていて、なんとなくこの映画を思い出したので3番目のエントリとしてアップしている。