精神疾患は年を取ると治りにくくなる話 | kyupinの日記 気が向けば更新

精神疾患は年を取ると治りにくくなる話

一般に、骨折などの外科疾患は高齢になると治りにくくなると言われている。骨折に限らず、内科疾患も同じようなことが言えると思う。

 

精神科医は長い期間、患者さんを治療している。僕の患者さんでは、最長で平成7年4月から約25年間治療している人がいる。この患者さんは、今はアパートに住みA型事業所に通っている。この人はおそらくここ12年くらい再入院がないので良好な経過だと思う。彼は一度過去ログに出ている。

 

 

元祖の記事はどこにあるのか不明で見つからないままである。当時はジプレキサを使っていたが、今はシクレスト5㎎で良好な経過である。シクレストは舌下錠であることがかえって欠点と言って良く、舌のしびれなどの違和感が嫌で止めたがる人が多い。数名使っているがその人たちは経過が良い。

 

上の人は経過が良いが、もう少し不安定で再入院が数年ごとにある人は、年齢が上がるうちに次第に治りにくくなる傾向がある。例えば、5年前は3か月以内に退院できたのに最近は入院すると8か月以上かかるなどである。

 

統合失調症の人は特に中途半端な状態で退院すると、早期に再入院になることが稀ならずあるので、しっかり安定してから退院した方が良いと思う。

 

彼らが凄いと思うのは、かなりの悪い精神症状が続き(例えば保護室に総計で2か月いるなど)、これはもはや年齢的にも退院は無理かも?と思う状態から回復することである。

 

統合失調症は慢性進行性ではあるが、機能的な疾患なのが良くわかる。

 

薬の選択は非常に重要で、その薬しか脱出口がないことがある。ここ2年で約8か月くらい入院して退院した人が2名いて、1名はジプレキサ5㎎、もう1人はプロピタン150㎎であった。プロピタンはたまに過去ログで書いているが、これしかない人がいる。ニッチに位置するが重要な抗精神病薬だと思う。しかし、今はどこの病院でも置いている薬ではなくなっている。

 

上記のプロピタンの人は、悪化が酷く病棟で洗面所に上がりおしっこをするような状態であった。間違えて他人の部屋に入ってしまうなど認知症類似の症状が長期間続いたのである。入院前は転倒がしばしばみられていたので脳炎も疑うような症状だったが(実際に中核病院でも精査をしている)、プロピタンを使い始めてようやくまとまり始めた。

 

その患者さんの重要な点は、忍容性が低く、かなり薬を選ぶことである。プロピタンは最初からは使わないが、難治性には試みても良い薬だと思う。

 

その患者さんは8か月前後入院したが、今はアパートで単身で生活している。実際、あそこまで行った人が無事退院して自宅で生活できているのが奇跡である。彼は70歳を超えているのである。(個人的には70歳はまだ若いという感覚もある)

 

このような経過を見ると、統合失調症の患者さんは高齢になると、器質性の紛れが加わり、治りにくなると言わざるを得ないと思う。