精神科病院の注射針の話 | kyupinの日記 気が向けば更新

精神科病院の注射針の話

このブログのプロフィールのテーマで、高校生の時、入院した話が出てくる。その病院は内科でも腎臓病専門病院で、治療費が他の病院よりなぜか高いと言う話だった。

 

入院中、ほぼ毎日点滴を受けていたが、いつも注射針は新品が使われていた。これは実際に見ていたので間違いない。当時の若い看護師さんたちも、今は自分より歳をとっているはずである。(年齢は追い越せないので)。

 

それから幾年も経ち大学を卒業し、医局からアルバイト先の病院を決められた。これは自分から希望を出せるものではなく、「この新入医局員は、車を持っているので遠方でも行けるだろう」とかそのような理由で決められていた。報酬なども病院により若干異なっていたので、運不運もあった。なぜか僻地ほど高い報酬というわけではないのである。ただし、極端に遠方だと確実に高かったが、そのレベルの僻地は毎週は行けないので外勤先にはなりにくい。

 

その遠方の精神科病院で、看護師さんが注射し終わった後に針を替えないで、他の患者に注射しているのを見て驚愕した。当時、C型肝炎はnonAnonB肝炎などと呼ばれており、既に注射針で感染することがわかっていたからである。僕が入院中16歳の頃、交換されていたので、その頃から10年近く経っている。

 

「精神科病院はなんて遅れているんだ・・」と思ったので、その看護師さんになぜ注射針を新しいものに替えないのか問うた。彼女の答えはもったいないからという話だったが、たぶん院長がそういう方針だったものと思われる。

 

B型肝炎は注射針による感染率が高いが、当時、既にB型肝炎のHBs抗原は血液検査所見でわかっていたので感染するとすれば、当時の認識としては主にC型肝炎(nonAnonB肝炎)である。僕は研修医時代に大暴れしている患者に注射をする際に酷く抵抗されたために自爆し、HBs抗原+の患者の血液により汚染された。大学病院内の肝炎専門の医師に相談に行ったところ、ビームゲンをするべきと言われすぐに受けている。当時、HCV抗体は検査そのものがなかった。(なんと当時からビームゲンはあった)

 

現在、B型肝炎は当時の理解とは異なっており、いわゆるC型肝炎的な、成人後感染し慢性化する(かつキャリアとなる)タイプも存在しているようである。

 

当時、この「注射針を交換しない」病院について医局長に報告したところ、なんと、「そういう病院には行くべきではない」という答えだった。これには呆れた。

 

その医局長が病院を指定し僕を派遣していたからである。

 

病棟婦長の1名は、ちょうどその当時、うちの病院に勤め始めたらしい。彼女に当時、使用後の注射針をどうしていたのか聴いた。彼女によると、煮沸消毒していたそうである。2分くらい煮沸消毒すれば安全なので使いまわすより断然よい。(しかし注射針は数名使うと切れなくなると思う)

 

C型肝炎も今はB型肝炎もだが、感染源が不明のことがある。それに比べ、これは医原性なので原因ははっきりしている。

 

当時疑問だったのは、そのようなだらしない医療をしていても、院内がC型肝炎患者ばかりにならなかったことである。

 

C型肝炎はB型肝炎に比べ感染率がかなり低い。輸血で大量に入ると危険だが、針刺し事故くらいでは感染率は3%程度である(数値は調査により異なる)。

 

院内のC型肝炎患者の入院率を考慮すると、さほど感染していないのも、そんなものかもと思う。夫婦でC型肝炎という話もあまり聴かないので、感染能力的には低いウイルスなのだろう。