患者さんには今の処方がベストなのか分かりにくい話 | kyupinの日記 気が向けば更新

患者さんには今の処方がベストなのか分かりにくい話

一般に、患者さんからみて、今、服用している薬がベスト、すなわち必要かつ十分なのか分かりにくいのではないかと思う。

ベストは何も飲まないことだ!

という人も一部にいるかもしれない。そのような人は、服薬している時点でベストとは思わないであろう。

ある精神症状があり、1つないしいくつかの薬を服用し、全体の90%の症状が軽快している場合、今の薬はベストに近いと感じる人が多いのではないかと思う。しかし、これは薬の種類やトータルの数にもよる。

年配の人では、薬の数は多いものの向精神薬は2種類しか服薬していないことがある。成人病の薬も併用しているからである。このような人は、ほぼ寛解状態であれば、満足すべきであろう。

例えば、パニック障害の場合、何らかの薬により100%発作が出なくなる確率は非常に高い。

自分の患者さんでジェイゾロフトだけ半錠服用するように伝えているが、服用しないでも大丈夫であれば、飲まなくても良いと言っている。この患者さんは、1週間に2日だけ服用すると言ったものではないらしい。

その人によると、精神的な感覚の悪化(つまり仕事が忙しいとか精神面で負担を感じる際)の時に1~2週間続けて服薬し、良くなったら飲まないという。したがって、半錠(つまり12.5㎎)を1か月分処方しても、次に来院するのは3か月後~半年後である。

この人は直接、聴いたことがないが、たぶん、今服用している薬と量はベストと思っているような気がする。

つまり、服薬量とその効果、その患者さんが薬を精神安定のツールとして支配下に置けるかどうかもかなり関係している。

問題は、結構種類も数も多い上に、しかも精神の安定がみられない人。

このような人は、ひょっとしたら、薬が多すぎるのでは?という疑念も生じやすい上、薬効への不信感も伴いやすい。これは直接、コンプライアンスの善し悪しにも繋がっている。

かなりの種類や量を飲んでいたとしても、過食嘔吐に対し劇的に効いているとか、長年続いていた希死念慮が消失したなど、非常にやっかいな症状がコントロールできていれば、ベストと思う人もいる。

やはり精神医療では、精神症状のモノと大きさは非常に重要だと思う。

なお、今日の記事は一応、統合失調症などの本質的に病識が欠如している人たちではなく、神経症や中程度以下の気分障害の人向けの記事である。

個人的に、1つの薬が上限にあったとしても、それで服薬前よりはるかに改善しているなら、ベストに近いのではないかと。このような人は将来減量できる可能性もある。

医師から見て、最もわからないのが、全然良くなっていないのに、勝手に減量したり止めてしまう人である。

普通、薬を減量したいと希望すると、主治医から何らかのアクションがあるものだ。これはまず主治医に相談してみると言う意味である。

このようなやりとりにより、主治医はその患者さんの精神症状と服薬に対する考え方を始め多くのことが把握できる。一方、患者さんも主治医が何を考えて、そのような処方をしているかがわかる。

精神科では、例えばAとBという患者さんがおり、非常に似た病態で、年齢や性別も同じように見えたとしても、服薬している薬や量が全く異なるということはありうる。

少ない処方でコントロールできている医師が100%優れているとは必ずしも言えない。(一般には少ない方が望ましいが)

いつも少量しか処方しない医師は、それで良くなる人しか扱えないからである。薬物療法はメリハリは非常に重要である。

それは、薬に対する反応性や忍容性は個人により多様だし、どのくらいの年月、患っているかも関係することも大きい。

年余にわたり悪い状態が続けば、一般に薬の種類や量は増える傾向がある。その理由を1言でいうと、簡単に良くならないからである。

その意味で、難治性の患者さんの治療経験は無形の財産になると思う。

参考
精神科治療と記憶
うつ状態はどうなったら良いのかが明確でない
ジェイゾロフトを毎週、1錠だけ貰う人
薬を飲み忘れたら、気づきますか?